第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「おいおい、慌ててかけないでくれ。それともあんずはこれがないと全く見えないのか?」
「いえ…そんなわけではありませんが…」
はっきり言うと、視力はそこまで悪いわけではない。だけど仕事をするときは書類の活字が読みづらかったりと、多少の不便を感じて眼鏡をかけるようになった。
本丸発足当初は仕事中しか眼鏡をかけていなかったけど、そのうち刀剣が増えるにつれて不安と戸惑いが出て、心に壁を作るように眼鏡を外せなくなった。そして、寝るとき以外はかけるのが当たり前になっていたのだ。だから鶴丸さんは私の眼鏡姿しか知らない。
眼鏡を取り上げられたら素顔を見られたような、丸裸にされたような気分になってしまい恥ずかしくて俯いた。
「せっかくだ、今日は眼鏡なしで行こうぜ」
「えっ、それは困ります…」
俯きながら尻すぼみに答えると、鶴丸さんは私の顎に手を添えて上を向かせた。すぐそばに整った顔立ちがあり目を合わせられない私は目線を彷徨わせてから、逃げるように遠くの山々に視線を向ける。
「しかしこんなに可愛いのに勿体ないと思わないか?」
「っ、かっ…可愛くないです…それより、降ろしてください」
「やれやれ……俺はかけない方が好きなんだがなあ」