第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「ちょっと鶴丸さんっ降ろして!」
「嫌に決まっているだろう。降ろしたらきみは執務室に戻るからな」
「…っ!も、戻りません!戻りませんから…ッお願いです、降ろしてっ」
玄関で私を抱き上げたまま私の靴を手に取り、そのまま本丸を後にしようとする鶴丸さんに慌てて声を掛けるも聞く耳を持ってくれない。
いくらなんでもこのまま万屋まで行くのは恥ずかしすぎて、横抱きにされたまま足をバタつかせ精一杯の抵抗を見せて懇願する。
かけている眼鏡がずれて落っこちそうになっているけど、そんなの気にしてられない。こうなったら眼鏡だけじゃなく自分も落ちてもいいという心境だ。
「おっと!全くあんずは想像以上にお転婆だな」
「それは鶴丸さんが…っ」
「ははっ参った参った」
本丸の門をくぐり、少し進んだところで眼鏡が私の身体の上に落ちてしまったことでやっと鶴丸さんは立ち止まってくれた。そして笑いながら腰を降ろし、膝の上に私を乗せたまま私の顔をじっと見つめる。
「こりゃ驚いた。きみ…眼鏡をかけない方が断然可愛いぜ」
「…っ」
慌てて眼鏡をかけ直そうとした私に鶴丸さんは待ったをかける。