第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
彼の行動に驚き咄嗟に手を引っ込めそうになったのを、逃がさないと言わんばかりにギュッと握りなおされ、振りほどこうにも微動だにせず、私のささやかな抵抗は虚しく終わった。
…初めて握られた鶴丸さんの手は少しひんやりとしていて冷たく感じる。
なにやら長谷部さんが鶴丸さんに凄い剣幕で何か言っているようだけど、鶴丸さんの複雑な手袋から覗く白くて骨骨しい手に気を取られてしまって、硬直している内に急に体が浮き上がった。
「ひ、きゃあ…っ!!な、なに…ッ」
「少し我慢してくれよ」
「貴様主に何をっ!」
「ほら、息抜きに行こうぜ」
「へ…っ…ちょっとま…」
「おい待てっ!」
あっという間に私を抱き上げ、軽々とした身のこなしで執務室を後にしようとする鶴丸さんの前に立ち塞がった長谷部さんを、鶴丸さんは笑いながら振り切り廊下を走る。
私はというと急に起こった出来事に頭が付いていかず、ただ振り落とされないように必死に鶴丸さんの首にしがみつくことしか出来ないでいた。
途中ですれ違った太鼓鐘さんは私たちを見て何故か嬉しそうに手を振っていて、大俱利伽羅さんは呆れた眼差しを私達に向けていた。