刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第34章 神気
──暫く時間が止まったように動けなかった。
「大倶利伽羅殿…」
「…」
一期一振が俺の気配に気付いた途端バチリと視線がぶつかった。俺の名を呼ぶ一期一振の声が鼓膜に直接響く。先の件もあり一瞬緊張が走ったが、一期の瞳は既に彼女に向けていた情愛溢れる瞳ではなく、いつも見るそれに戻っていた。
「弟の虎を見つけて下さり、有り難うございました」
「…あぁ」
俺が見ていたということに気付いていないのか、いや…気付いていない筈がない。それでも普段通りの穏やかな笑みを俺に向け、深々と頭を下げ去って行く一期一振の背中から暫く目が離せなかった。
胸に引っ掛かりがあるまま俺は彼女の隣に腰掛け、熟睡している彼女の頭を起こさぬよう俺の膝にもう一度そっと置く。んん…と言いながら俺にすり寄る姿が愛おしい。
「ぁ…」
「起きたか…」
「伽羅ちゃん…?」
「…どうした」
暫くして彼女が目を覚まし、俺を見上げた。しっかりと俺を捉えた瞳は途端にふにゃりと弧を描き、俺の心に暖かな光を灯す。
「伽羅ちゃん、ずっと頭撫でてくれてた…?」
「…」
「伽羅ちゃん?」
「…さあな」
「ふふ、何それ」