第25章 王都の舞踏会
ラドクリフを完全に言い負かしたハンジは、悠々とソファを一人で占領しているその長い足を組みかえた。
「ハンジ、おしゃべりはそこまでだ。そろそろ明後日の話をしよう」
エルヴィンが言えば、ミケが訊く。
「肝心のリヴァイがいないが…。呼び戻そうか?」
「いや、集まってもらったのは… 今回の急な舞踏会への参加要請およびペトラの指名という前代未聞の特殊な状況についての各々の意見を聞きたかったからだ。別に今、リヴァイが不在でもかまわない。リヴァイには明日にでも訊けばいいし、それが無理なら王都へ向かう船の中ででも、ゆっくりと話し合うさ。船旅は、時間だけはたっぷりあって退屈だからな」
「そうか…、了解」
「では始めよう。事のあらましから。昨夜、王都からの急ぎの手紙が届いた。これだ」
机の引き出しからエルヴィンは一通の手紙を取り出した。
「こう書かれてある…」
こうして団長室では明後日の舞踏会への意見交換会なる対策会議が、リヴァイ不在で始まった。
一方食堂では。
端の方の人から離れた席で、ペトラとマヤが食事中。
「もうハンジさんったら、ひどいよね!」
もぐもぐとパンを口いっぱいに頬張って、ペトラが憤慨している。
「あんな… 団長や分隊長、そして何より兵長本人が思いきりいるところで、昨日の大浴場での恋バナのことをばらすなんてさ!」
マヤは芋だらけのシチューを食べる手を止めた。
「うん…。恥ずかしくて死ぬかと思った…」
団長室での会話を思い出すだけでも、どきどきしてくる。
スプーンに目を落として頬を赤らめているマヤを見て、ペトラはにやっと笑った。
「でもさ、最初は何を言い出すんだハンジさん!って思ったけど、結果としては兵長がまたデートに誘ってくれるみたいな話になったし、良かったんじゃない?」
「……うん」
「ハンジさんってさ、ものすごーく頭がいいから最初から全部計算済みだったりしてね!」