第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
リヴァイの顔が見れないほどの書類の山。エルヴィンとミケと何やら揉めていたらしいという話。ミケがはっきりとは何も教えてくれなかったのも、すべてマヤには気になって仕方がない。
だが来て早々に疑問をぶつけるのは得策ではない、今は一枚でも多く書類を片づけようと、マヤは万年筆を握りしめた。
そのとき、書類の山に囲まれて姿の見えなかったリヴァイがスッと立ち上がった。
「マヤ」
顔を上げれば、リヴァイの射るような真剣なまなざしに囚われた。
……何かしら?
緊張がじわりと広がって、そんな自身を落ち着かせようと万年筆をゆっくりとテーブルに置く。
「……今日、調整日を申請した」
「……そうですか」
我ながら素っ気のない返答だとは思ったが、良かったですねと言うのも変な気がしてマヤは曖昧に微笑んだ。
だがまさかこれから、次々と驚きのオンパレードになるとは想像だにしなかった。
「最初は27日から二日間のつもりだったが、エルヴィンがいい顔をしなくてな…」
「……どうしてですか?」
「28日にトロストの駐屯兵団本部で会議がある。ピクシス司令が一年の総括として毎年王都でおこなっていたものを、今年はトロストでやるらしい。それに出ろとうるせぇ」
「任務なら仕方がないですよね…」
「ハッ、あれはピクシスのジジィが酒を飲む口実で皆を集めているようなものだからな…」
「………」
マヤはどう答えたらいいかわからず、黙ってリヴァイの話に耳を傾けることにした。
「28日は駄目だとエルヴィンが渋るから26、27日にしようかと思ったら、ミケが横から口を出してきて25日にしろと。まだエルヴィンの言う28日の方は一応任務だが、ミケのは理由らしい理由もねぇし、大体あいつに指図される覚えはねぇ」
リヴァイは不愉快そうに目を尖らせている。
「あの…、12月25日って兵長のお誕生日ですよね…?」
「………!」
リヴァイはマヤに指摘されて初めて理解したような顔をした。
……あの野郎、だからあんなニヤついた顔をしやがったのか。