第25章 王都の舞踏会
「……はい…」
また “はい” と返事していいものかどうか…、マヤが迷いながらも返事をした途端に低い声が飛んできた。
「その必要はねぇ」
びくっとして声のした方を見れば、リヴァイが射るような鋭い視線を投げてきている。
「……はい…」
今度はリヴァイに対して返事をしたマヤにハンジが口を尖らせた。
「え~、リヴァイの言うことなんか聞かなくていいんだよ? 無事に次のデートをしたあかつきには是非、マヤの口からリヴァイとのムフフ話を聞かせてほしいんだけどなぁ!」
“デート” という単語も恥ずかしかったが、今度はハンジお得意の “ムフフ話” だ。
「ねぇねぇ、どうなの? 聞かせてくれるよねぇ? ムフフ話!」
「えっ、あの… それは…」
マヤは恥ずかしさのあまり再び、顔を赤くして口をぱくぱくさせている。
マヤの窮地を救ったのはエルヴィンだった。
「いい加減にしないか、ハンジ。マヤが困っているだろう? マヤとペトラには、万全の体調で明後日の舞踏会にのぞんでもらう。それでなくても貴族に招待などされて緊張しているはずだから、その他のことで余計な気苦労をかけたくはない」
エルヴィンの声はおだやかではあったが、逆らうことを許さぬ確固たる響きがあった。
「ちぇっ、わかったよ… 了解!」
大人しく引き下がったハンジに、まるで “いい子だ” とでもいうようなまなざしを送ったエルヴィンは、ペトラとマヤに声をかけた。
「今日は疲れただろう? もう下がっていいから明日に備えたまえ」
「「了解です」」
ペトラとマヤは声を合わせて敬礼する。そのまま二人して扉に向かうと “失礼します” と頭を下げて退室した。
「あぁぁ~! 行っちゃった。……見た? マヤの困った顔。赤くなって可愛いねぇ!」
「おい、クソメガネ。マヤで遊ぶのはやめろ」
「遊んでなんかないよ。いたって真剣にマヤとリヴァイ、君たちの恋を応援しているつもりだ」