第25章 王都の舞踏会
「……お願いですから… もう… それくらいで…」
なんとか声をふりしぼってハンジに訴えるマヤ。
……デートのこと、そんなにはっきりと言わないでください…!
マヤは心の中でそう叫んでいた。
団長室にペトラと報告のために訪れた。
速やかに報告を終えたら退室して、次はリヴァイ兵長とミケ分隊長にも報告。そして食堂に行ってごはんを食べて、明朝の立体機動の自主練に備えて早く寝て…。
そう勝手に頭の中で予定を立てていたのに、団長室には幹部が一同勢揃い。
驚いたけれど、次の予定である兵長と分隊長への報告も一度に済む…、ある意味ラッキーだったと思っていたら。
……ハンジさんが “マヤが帰ってこないからリヴァイがイライラした” なんて言い出すんだもの。兵長に限って、そんなことはないと思うけど…。
マヤが戸惑いながら聞いていると、ミケ、ラドクリフ、エルヴィンから巧みにリヴァイの様子を訊き出すハンジ。
それによると本当にリヴァイはイライラして落ち着かなく過ごしていたらしい。
恥ずかしいやら嬉しいやら。
もし本当にリヴァイがイライラしていた理由が、ハンジの言う “マヤがなかなか帰ってこなかったから” だとすれば、マヤは素直に嬉しい。
だけれども、ハンジだけならともかくエルヴィン、ミケ、ラドクリフもいる状況で、やたら “リヴァイがマヤを心配して” などと連呼されると恥ずかしい。
それでもやはり嬉しさの方が勝ってしまう。
だから恥ずかしいが、黙っていた。思いきり自身の名前が出てくる話題だが、素知らぬ顔をしていた。
……そのうち違う話題に変わるだろうし。
なのに全然変わらないどころか、どんどんハンジのボルテージは上がり、ついには禁断の言葉の “デート” が飛び出す始末。
……それだけは言わないで…!
当事者であるリヴァイ兵長はもちろんのこと、エルヴィン団長、ミケ分隊長にラドクリフ分隊長が顔を揃えている今ここで、お願いだからデートのことはふれないでほしかった。
だから上官同士の会話に口を挟むという無礼を働いてまで、マヤは止めようとした。