第25章 王都の舞踏会
二階の小部屋に入ると二台のトルソーに、純白と薄紅梅のドレスの花が咲いていた。
「うわぁ…、素敵!」
思わず感想を漏らしたペトラに微笑むエステル。
「ありがとうございます。仮縫いが終わりました。今からご試着していただきます。本番と同じ下着からつけていただき、胸元の開き具合やウェストラインの位置、スカート丈のチェックなどをおこないます。また立ったり座ったり、少し歩いたり跳ねたりもしていただきます。どんな姿勢でも違和感なくお体にフィットしているかをチェックいたします」
「「はい」」
「なんの問題もなくフィッティングチェックが終わりましたなら、すべての糸を外し本縫いに入ります」
ペトラはマヤにこそっとささやく。
「糸を外しちゃうの、もったいないね」
「もうこれで完成って言ってもいいのにね…」
マヤもペトラに同意したが、すぐに聞きつけたエステルに否定されてしまった。
「それは違います、ペトラ様、マヤ様。ドレスで一番大切なものは何か、わかりますか?」
「美しさ?」
とペトラが即答すれば、マヤはほんの少し考えてから、
「着ている人を輝かせること…?」
と首をかしげた。
「もちろんそれらは正解です。美しいドレスが、着ている人の美しさを引き出す…。ですが一番大事なことは “着心地” なのです」
「「着心地…」」
自然と声の合わさるペトラとマヤに微笑むエステル。
「どんなに見た目が美しいドレスであったとしても、それを着ている人にとって着心地が悪ければそれは良いドレスではありません。良いドレスは何をさておき一番に “着心地の良い” ものでなければならないのです。着心地にこだわらなければ、仮縫いの工程はなくしてしまって、いきなり本縫いでもかまわないのです。ですが最高の着心地のために仮縫いをしてご試着、フィッティングチェックの作業をおこなうのです」
熱弁をふるうエステルに圧倒される。
「本来ならば仮縫いとご試着は、ご納得のいくまで数回繰り返されるものなのですが、今回はセミオーダーですし、また時間も全くありませんので、一度きりのチェックで仕上げます」