第25章 王都の舞踏会
ペトラの歓喜の声が響く。
「このクッキー、美味しい! どこのお店のだろ?」
厚切りハムステーキのランチを食べたばかりというのに、マヤとペトラのおなかは、いわゆる “甘いものは別腹” 状態だ。
「本店の応援の人たちのお土産って言ってたから、王都のクッキーなんじゃないかな?」
「そっか~。美味しいはずだね!」
そのクッキーは高価なチョコレートチップが散りばめられている。さくさくのクッキー生地と甘いチョコレートの組み合わせに、二人の手は止まらなくなっている。
ぱくぱくと食べながら、マヤが訊く。
「応援の人って何人来たのかな?」
ペトラは “ディオール” の応援部隊の人数より、目の前のクッキーにしか興味がないので、適当に答える。
「さぁ…? 二、三人?」
「……王都からトロスト区まで連絡船で7時間くらいかかるでしょ? トロスト区の船着場から馬車を飛ばして…。さっきここに着いたらしいから朝一番の船で来たのね…」
マヤはペトラのつれない返事を気にもしないで “ディオール” の応援部隊の移動についてつぶやいている。
「エステルさんは明日の午後に仕立てたドレスを本店に送るって言ってたから…。きっと応援の人たちが持って帰るってことなんだろうな…。ねぇ、ペトラもそう思わない?」
「えっ、何が? ごめん、聞いてなかった」
マヤの倍の数のクッキーをすでに口の中に送りこみながら、ペトラは軽く謝る。
「応援の人たちは今夜、ここに泊まってエステルさんとジャドさんと一緒にドレスを仕立てるでしょ?」
「……だろうね」
「それで完成したドレスを持って、また船で帰るんだろうなぁと思って」
「……だろうね」
ペトラは関心のない声で相槌を打っていたが、一応マヤの真意を聞いてやろうと質問した。
「それが一体なんだっての?」
「だって大変じゃない…。何時間もかかってやってきて、また何時間もかかって帰る訳だし」
「そうだけど…。でもまぁ冷たい言い方だけどそれが仕事っていうか、まぁうちらには関係ないし?」
そう言うとペトラは、チョコチップクッキーにまた手を伸ばした。