第25章 王都の舞踏会
「本来ならば伯爵の開催する王都での舞踏会でお召しになるドレス…。フルオーダーでじっくりと時間をかけたいところなのですが…。なにしろその時間がありませんので…」
返す返す残念だと声に無念をにじませながら。
「その不利な条件を克服するためにはセミオーダー、それもあらかじめ大まかにデザインはこちらで決めさせていただきます。よろしゅうございますね?」
「「はい、それはもちろん大丈夫です」」
素直に同意してくれる目の前の若い客に微笑むエステル。
「ありがとうございます。ではこちらの中からお好きなドレスをお選びくださいまし。この中のものはオーソドックスでシンプルなデザインですので早く仕上げられますし、また少しのアレンジでいくらでもゴージャスにできますので」
エステルの示した範囲にあるドレスは七着あった。
さっと見たペトラとマヤだったが、正直にいえばどれが良いかもわからない。どれも素敵で、二人にはまぶしく輝いて見える。
だが迷っている暇はない。
とにかく時間がないのだ。
エステルの焦燥感は、ペトラとマヤの二人に乗り移っていた。
「私は、これにします」
マヤはスカート部分が裾に向かってふんわりと広がっているデザインのドレスを指さした。
胸元はシンプルなデザインで控えめ、露出は少ない。ウェストはきゅっと絞ってあり、ドレスと同色の大きなリボンが結んである愛らしいスタイルだ。
幼いころに絵本で見たお姫様が着ていたドレスみたいだ、と思ってそれを選んだのだ。
「かしこまりました。こちらは羽のように軽いシルクオーガンジーを重ねたパニエも付属しておりますので…」
そう説明しながらエステルがスカートの裾をちらりと持ち上げると、幾重にもふくらんだ純白のパニエがマヤの目に焼きついた。
「本当にお姫様みたい…!」