第25章 王都の舞踏会
「ペトラ様、マヤ様。見苦しい内輪話をお聞かせしてしまって申し訳ありません。このような事情ですので早速、採寸を…」
エステルとジャドの話を聞きながら、ペトラとマヤは同じことを考えていた。声に出して確認し合わなくても、心の通じている者同士、想いは一つ。
二人はうなずき合い、ペトラが代表して口をひらいた。
「エステルさん。わざわざ縫っていただかなくても、ここにあるドレスで充分です。たくさんあるから、私たち二人が着られるドレスがあるんじゃないですか? そうしたら徹夜なんかしなくてもいいんですよね?」
やはり考えていることは全く同じだったと、ペトラの隣でマヤが大きくうなずいている。
「ペトラ様…。お心遣いを感謝いたしますわ。でもそれは “ディオール” としては到底受け入れられないお申し出でございます」
エステルの目の色が誇りに満ちる。
「我が “ディオール” はドレスに関しては、完全なるオートクチュールメゾンでございます。階下のショールームのものも、ここにあるものも決して、そのままで販売するものではないのです。この値札は…」
エステルは手近のところにあった黄緑色のドレスの値札に指でふれる。
「このドレスそのものの販売価格ではなく、このデザインを選んでいただいた場合のセミオーダー代の目安となっておりますのよ」
……蝉はセミオーダーのセミだったんだ。
マヤはそう思いながら、気づけば疑問を口に出していた。
「……目安?」
「ええ。お客様それぞれで体型が異なります。使用する生地の量も変わってまいりますし、デザインも生地も全く100%このままという訳でもなく、お好きにアレンジが可能ですので、そういたしますとお値段も変わってくるのです」
「……なるほど。よくわかりました…」
マヤは小さくうなずいた。