第25章 王都の舞踏会
エステルに急かされて客車から一歩出る。
そこはマヤにもペトラにも縁のない高級ブティックや宝飾店が立ち並ぶ界隈。
二人の前にそびえ立つのは、目にしたことのないような全面ガラス張りの開放感あふれるショールーム。色とりどりのドレスが花畑のように咲き誇っているのが、外からでもよく見える。
「「………」」
圧倒され何も言えないでいると、店内から細身の男性が飛び出してきた。
「エステル様…!」
「クリス、馬車を裏にまわして。ジャドは来てる?」
「はい! 待機しています」
「そう。今日はもう、上には誰も上げないで」
「わかりました」
クリスと呼ばれた男性はペトラとマヤに慇懃にお辞儀をすると、馬車の御者台に上がる。
「はいやっ!」
鞭をふるい、ガラガラと馬車が動き始めた。
それを見届けたエステルは一階部分がガラス張りになっているショールームに入り、ぼうっと立ち尽くしているペトラとマヤにあらためて入店をうながす。
「さぁ、どうぞ。ディオールへようこそ」
煌びやかなショールームの雰囲気にのまれてしまっている二人は、顔を見合わせたのち、恐る恐る足を踏み入れた。
一生着用する機会などないような高価なレースをふんだんに使った豪華なドレスを着たマネキンが、何体飾られているだろうか。また壁一面に吊られているドレス。様々な形の帽子、靴にバッグにアクセサリー。それらが織り成す色の洪水に、頭がくらくらしてくる。
「このフロアはショールームでございます。こちらへどうぞ。お急ぎください!」
飾られているドレスに目を奪われているペトラとマヤを、ショールームの端にある螺旋階段へと追い立てる。
「二階は店舗になっております」
エステルの声を聞きながら螺旋をぐるりぐるりと上がると、一階のショールームとはがらりと変わった重厚な雰囲気のフロアが広がっている。
一階よりは少ないとはいえ、たくさんの芸術のようなドレスが展示されているが、店舗というだけあって値札がついている。