第25章 王都の舞踏会
「よろしいですか? 舞踏会は明後日でございます。たった二日後ですよ? それを今からドレスを新調しろだなんて我がディオールに対する挑戦ですわ!」
怒気をはらんだ声に、マヤとペトラはぞっとする。
「あぁもう! この時間がもったいない! シャワーならうちでお使いになってくださいまし。さぁ乗って!」
もう何がなんだかわからない。
マヤとペトラは追い立てられるように客車に乗りこむ。それを見届けたエステルは御者台に飛び乗って馬車を走らせた。
ゴトゴトゴトゴト… ゴトゴトゴトゴト…。
客車の中で向かい合って座っているペトラとマヤ。足下から聞こえてくる音と振動が、そのまま焦っているエステルの心情を代弁しているようだ。
「ねぇ… ペトラ! 一体どうなってるの? なんで指名されたの? 心当たりはあるの?」
堰を切ったかのように質問を繰り出すマヤ。
「全然!」
首を大きく左右にぶんぶんと振るペトラ。
「今から仕立屋さんに行って、二日後にある舞踏会で着るドレスを作るってことだよね?」
「うん、そうだと思う。……なんかごめん、巻きこんじゃって…」
めずらしくペトラがしおらしい。
「団長室に呼ばれたと思ったら、貴族が指名しているから舞踏会に出ろ、他に何人か一緒に連れていくのは誰がいいかって訊かれてさ…。もう訳がわかんないし気づいたらマヤとオルオの名前を出してた」
「そんなの謝ることなんか全然ないよ。ただ私も状況がよくわからなくて混乱してるだけで…」
マヤは窓から外に目をやる。ヘルネへは歩いて30分ほどの距離だ。馬車を飛ばせば、すぐに着いてしまうだろう。
「それに不安なときに、私の名前がとっさに出たなんて嬉しいよ?」
「うん。ホントに頭が真っ白になってたんだけど、マヤの顔とオルオのシワシワが浮かんだ」
「ふふ」
困ったときに自分を思い出してくれたことと同じくらいに、ペトラがオルオを頼ったことが嬉しい。
ゴトゴトゴトゴト… ゴトゴトゴットン!!!
乱暴に馬車は止まった。
バタン!と扉がひらき、エステルが叫ぶ。
「さぁ着きましたよ! どうぞ店内へ!」