第25章 王都の舞踏会
「よろしい。そこでだ、早速今からペトラとともにヘルネへ行ってもらう。エステルさん、お願いします」
エルヴィンはエステルに頭を下げた。
「かしこまりました」
エステルはすっとソファから立ち上がると、ペトラとマヤに声をかける。
「では… お二方。馬車を用意してありますので…」
その声にうながされて退室しようとする二人だったが、リヴァイの鋭い声がさえぎる。
「……二人を今日中に帰すんだろうな」
「もちろんでございます。採寸して生地とデザインを選んでいただくだけですので…。では失礼いたします」
にこやかに返答して深々とお辞儀をすると、エステルはさっさと出ていった。
ペトラとマヤも “失礼します” と頭を下げて慌ててエステルのあとを追う。
上品な雰囲気のエステルだが、思ったより足が速い。
ほぼ走るような勢いで階段を下りる。
息を切らしてペトラとマヤが馬車までたどりつけば、エステルが扉を開けて待っていた。
「さぁ、お二方! どうぞお急ぎになって!」
「あの… エステルさん。私たち、訓練の途中で呼ばれてまして…。着替えてきてもいいでしょうか?」
事情はまだ完全にはのみこめていないが、どうやらペトラの付き添いで王都の舞踏会に行くことになった。そしてドレスを仕立ててもらうらしい。
王都の舞踏会…。ドレスをあつらえる…。
優美なイメージの世界に飛びこむのに、訓練で汗をかいた兵服で仕立屋におもむくのはいかがなものなのか。
マヤはそう考え、思いきって発言したのだったが。
「マヤ様…? でしたか?」
「えっ、あっ、そうです」
「そんな時間はありません! あなた様を呼びに行っている時間すら惜しかったのでございますよ?」
「「………?」」
よく意味がわからず、ペトラと顔を見合わせる。