第25章 王都の舞踏会
「マヤ、前へ」
「はい」
言われたとおりに前へ進み出て、ペトラの隣に立つ。
「急な呼び出しですまない。実は昨日の夜に、ある貴族から急ぎの手紙が来たんだ。そこには二日後におこなわれる舞踏会に急遽参加してほしいと… ペトラに」
「えっ!」
貴族やら舞踏会やら縁のない世界の単語がぽんぽんと出てきて面食らっていたマヤは、ペトラの名指しに再び驚いて思わず声を漏らしてしまった。
「君が驚くのも当然だ。私も少なからず驚いた。これまでに舞踏会の招待はいくらでもあったが、リヴァイ以外の指名は初めてのことだ」
……兵長は指名されてるんだ…。
貴族やら舞踏会やら全然わからないが、そのような煌びやかな世界から指名される兵長は、やっぱりすごい人なんだとマヤはあらためて思った。
「その手紙にはこうも書かれていた。“ペトラ・ラル様のドレスをあつらえさせていただく、本来ならば屋敷にお越しいただきたいのだが急につきヘルネにある仕立屋を向かわせるのでよろしく頼む” と。そしてそこにいらっしゃるのが、仕立屋のエステルさんだ」
エルヴィンの目の動きにしたがってマヤがソファの方を振り返ると、座っていた年配の女性が頭を軽く下げる。
「“ディオール” ヘルネ支店から参りましたエステルでございます」
「マヤ・ウィンディッシュです」
つられてマヤも名乗ってしまったが、必要なかったのではないかと思い赤面する。
マヤの羞恥心にはかまうことなくエルヴィンは話をつづけた。
「私とリヴァイ、そして指名されたペトラの他に数名程度なら誰でも参加してかまわないと。いやむしろペトラのために、気心の知れた兵士を同行させろと書いてあった。そこでペトラに意向を訊くと、マヤとオルオに一緒に行ってほしいと言うんでね、君を呼んだんだ。同行してくれるね?」
拒絶する権利などあるのだろうか? とマヤは思いながら即答する。
「はい、もちろんです」