第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
ごちそうのことを思い浮かべて笑顔のマヤは、そのご機嫌な気持ちのまま部屋をぐるりと見渡した。
「このお部屋、入り口の扉や掛軸、それにこのランプなんかはすごく東洋っぽいですよね」
間接照明になるように部屋の四隅に配置されているランプのシェードは漉いた紙でできていて、東洋の雰囲気抜群のしろものだ。
「そうだな。王都の貴族の屋敷でも見かけたことがねぇタイプのランプだ」
「私も初めて見ます」
ランプの次にはどうしても、部屋で一番の存在感を示している大きなダブルベッドが目に入る。
そうなると気にしないようにしていても、やはり先ほどと同様に緊張してくる。その緊張が体に現れて、カチコチとした妙な動きでベッドを見ないようにして壁や天井を見上げている。
そんなマヤの様子を怪訝に思ってリヴァイがますます凝視してくるから、緊張がさらに強まっていく。
「……どうした?」
ついにリヴァイが心配して声をかけてきた。
「あの…、その…、緊張しちゃって」
「……緊張?」
ついさっきまで楽しそうに美味しいものを食べると張り切っていたのに、今度は緊張したとカチコチと妙な動きをしている。
リヴァイには訳がわからなくて、眉間に皺を寄せた。
そのいつも見慣れた表情を目にしながら、マヤは思いきって正直に告白した。
「だってお部屋に二人きりなんて緊張します…!」
「ハッ、いつも執務室で二人きりじゃねぇか。それと同じだろ?」
「全然違います! 執務室はお仕事だし、いつでも誰でも入ってくるから厳密には二人きりじゃないもの」
……そういうものか?
リヴァイは少々疑問に思ったが、執務室では完全に二人の世界に没頭することはない事態をいくつか思い出した。
その最たる例が唐突に乱暴に、けたたましく叫びながら乱入してくるハンジ。
……確かにここは、クソメガネは絶対にやって来ねぇよな。
それとほぼ同時にもうひとつの事態も頭に浮かぶ。
……おいおい、あれは…、あの日は二人きりだったんじゃねぇか…?
「あの日は二人きり…」
つい口にしてしまったが、言うのをためらうリヴァイ。
「あの日…?」
「スペリオル村で…」
壁外調査でマヤが巨人に襲われたあの日の宿営地の村長の屋敷の一室で。
だがこの話は、マヤに嫌な記憶を呼び覚ます。