第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
……傷つけたくねぇ…。
その一心で言葉をのみこむリヴァイ。悲哀に満ちた顔は苦しそうにも見える。
「……兵長?」
スペリオル村でと言ったきりのリヴァイの顔を覗きこむ。
「壁外調査の…?」
「……すまねぇ。嫌なことを思い出させたな」
「あっ…」
巨人に襲われたときのことをリヴァイが気遣ってくれているのだと気づいて、マヤは手をひらひらと振った。
「大丈夫ですよ? あのとき兵長が助けてくれたから、今があるんだもの」
「ならいいが…」
リヴァイが思ったほどには、マヤは気にしていないようで胸を撫で下ろした。
「怖かったですけど兵長がそばについていてくれて嬉しかったです、だから大丈夫。それにあの日のことを引きずって戦えないようじゃ、散っていった仲間に顔向けできない…」
マリウスやザックたちの顔が浮かんでは消える。
「あぁ、そうだな…」
リヴァイにはもっともっとたくさんの仲間の姿が心によぎった。
「だから私のことは気にせずに話してください」
「わかった」
リヴァイはひと呼吸置いてから。
「あの夜は俺とマヤの二人きりだったと思ってな…」
「そうですけど…、あのときはまだ…」
マヤは少し恥ずかしそうに目を伏せた。
「おつきあいしてなかったし…。でも今は…」
たくさんの想いが洪水のように押し寄せてくる。
……最初はどちらかといえば兵長のことは苦手だったくらいなのに。
いつしか恋しい想いにとらわれて身動きできなくなって。
愛おしいと強く感じる相手と心が結ばれるという、奇跡のような出来事が起こって。
そして今、こうして二人きりで見つめ合っている。
……これ以上のことなんかないわ、世界中どこにも。
リヴァイを見上げるマヤの瞳が揺れている。
その光に惹きつけられて、気づけばリヴァイはマヤの華奢な肩を抱き寄せていた。
「あ…」
リヴァイの引き締まった体にすっぽりと包まれて、思わず声が出てしまう。
今までも幾度となく抱きしめられてきたが、あらためて筋肉質の腕から伝わってくる力強い熱と想いに圧倒されて息ができない。
「マヤ…」
リヴァイの低く掠れた声が何をささやくのかと期待して、気が遠くなりそうになる。