第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「今は俺たちはつきあっている…」
腕の中の愛おしい存在が、普段はあまり多くを語らないリヴァイの想いを加速させる。
「誰も邪魔はしてこねぇ、二人きりだ…」
リヴァイの低い声が奏でる言葉と、その言葉どおりの状況に胸がいっぱいになって、マヤはただリヴァイの胸に顔をうずめて身を任せるしかできなくなる。
「マヤ…」
名を呼ばれ、うずめていた顔を上げれば、待ちかまえていた青灰色の瞳に射抜かれる。
「兵長…」
マヤの琥珀色の瞳も恋の涙で濡れそぼって、頬をつたう雫がきらりと光る。
その涙を吸いつくそうとするリヴァイとの顔の距離が限りなくゼロに近くなったそのとき。
「お食事の用意が整いました」
遠慮がちに扉をノックする音と、カズオのかすかな声が聞こえてきた。
「いつでもお好きなときにお越しくださいなぁ」
リヴァイとマヤは気恥ずかしそうに接近していた顔を少し離して見つめ合う。
カズオに返事をしなければと思うが、どうやらその前に部屋の前から立ち去ったようだ。
「……メシだな」
「ごはんですね…」
口では互いにそう言いつつも、離れがたくて。
かといっていつまでも抱き合っている訳にもいかず、ゆっくりと身を離す。
「行くか」
照れた様子でリヴァイはぼそっとつぶやくと、扉の方へ歩き始めた。
「はい…!」
いつまでもリヴァイと密着していたい気持ちはもちろん強いが、もともと楽しみにしていた夕食である。マヤは急に嬉しくなってきて、元気よくほがらかに返事をすると、リヴァイのあとをついていく。
からからと響く扉のかろやかな音が、さらにマヤの気持ちを上げて。
「紫陽花の間に行くんですよね…!」
「嬉しそうだな」
「おなかがぺこぺこですから!」
スキップしそうな勢いで跳ねるように廊下を行くマヤは、先ほどまで見せていた光る涙を流す恋する女とは別人のように幼く見えた。