第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「さっきタキゾノさんが、お客さんの好みに合わせて掛軸を掛けるって言っていたけど…」
マヤは目の前の “雪中紅椿とメジロ” を見ながら、ゆっくりと考えて話している。
「私たちの好みなんて知らないはずだし、きっと想像でこれがいいって決めてくれたんだと思うけど本当にすごく好き、この掛軸。紅い椿に白い雪が綺麗だわ。なんだかとってもめでたい感じもするし」
「めでたいか…」
「ええ、紅白だもの。めでたいし、その彩りのなかで鶯色(うぐいすいろ)のメジロがワンポイントになっていて素敵です」
「ハッ、いっぱしの評論家みたいじゃねぇか。ところでマヤ先生、なんで紅白はめでたい…?」
「それは赤は魔除け、白は神聖さを表す色だから、その組み合わせが縁起がいいからです」
「ますます評論家先生だな」
ふざけるリヴァイにマヤは軽く頬をふくらませた。
「そんなすごいものじゃないわ。学校の創立記念日に紅白の焼き菓子が配られたことがあって、そのときに先生が説明してただけです」
「ほぅ…」
「苺とホワイトチョコのクッキーで、美味しかったなぁ」
子供のころの懐かしさとともに、良き甘さも思い出されてマヤは笑顔になっている。
「………」
菓子の思い出で嬉しそうに笑っているマヤが愛らしい。でもそれを言葉にすることはできずに、ただ隣に立ち見つめる。
「さっきの椿茶も美味しかったし、お料理楽しみですね」
美味しかったつながりで、夕食が楽しみになってくるらしいマヤ。
「ユトピアで食べたラム肉がやわらかくて美味しかったけど、今日も出るのかな…? 来るとき綺麗な小川があったから、お魚かも? それとも別の名物が…? 山奥だし何かめずらしい山菜とか出てきたら嬉しいな」
もはやリヴァイに言うのではなく、ぶつぶつと独り言の境地で次々と夕食のメニュー予想をしている。
その様子が可愛くて、黙って見つめていたリヴァイも思わず笑ってしまう。
「腹いっぱい食う気満々じゃねぇか」
「当然です。せっかくだから美味しいものをたくさん食べますよ!」
「そうか」
なぜか腕まくりしているマヤが、リヴァイはとことん愛おしい。