第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
もちろんそのそばには例のごとくモブリットがいる。
「えっ、あ、それは…」
突然現れたハンジに戸惑いつつも、ペトラは答えた。
「年忘れの宴会に出ろってグンタさんに言われちゃって…」
「へぇ、いいじゃないか。何か問題でも?」
そう言いながらハンジは空いている席に腰をかける。モブリットもつづいた。
「それがオルオと、め、め、夫婦漫才しろって…」
ペトラの言葉が詰まったので、ちらりと横目でハンジは。
「なるほど。それは大いに気になるね!」
なぜか簡単に同意してくれたハンジの隣で、モブリットは首をかしげている。
「それのどこが気になるんだ…?」
「嫌だな、モブリット。ペトラは純情で可憐なうら若き乙女なんだよ? それをグンタの馬鹿が夫婦漫才しろだなんて」
「はぁ…」
モブリットはそれのどこがいけないのか、全くもって理解できずにいた。
「いやでもペトラとオルオなら、いつもどおりにすればいいだけでは? 何も難しいことではない」
「何を言っているんだ。その “いつもどおり” が気になるのさ」
「???」
ますます首をかしげるモブリットだったが、ペトラは嬉しそうに目を輝かせた。
「そうなんですハンジさん、わかってくれるんですね!」
「無論だ。大体調査兵団の男どもは、頭脳明晰だったり屈強だったり変態ばかりでデリカシーが足りない。そこでだ! ちょこっと新薬を試してみないか? すべてのわずらいごとを消し去る効果の…」
「分隊長、ペトラを実験台にしようとするのはやめないと!」
モブリットが止めなければ、危ないところだった。
ちょうど昼食を持ってやってきたゲルガーが笑う。
「わずらいごとを消すのに、わざわざハンジさんの怪しげな薬なんか飲まなくても、酒さえあれば済む話!」
「アル中は黙ってな!」
ゲルガーの後ろにいたナナバが叫ぶ。
「仕方がない、あきらめるか」
「あきらめるか… じゃないですよ、分隊長!」
「誰かれなしに薬を飲ませようとするのやめないとな」
「犠牲になるのはモブリットさんだけでいいでしょ」
残念そうにしているハンジをモブリット、ゲルガー、ナナバが “本当にどうしようもない” といった様子でたしなめた。