第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
わいわいがやがやと盛り上がっているハンジたちのおかげで、ペトラの気持ちもすっかり落ち着いてきた。
「マヤ、なんだか色々気にするのも馬鹿馬鹿しくなってきたわ。年忘れの宴会は、何も考えずに楽しむことにするね」
「うん、それがいいよ。一緒に観ようね」
その後しばらくは、食卓についた皆は談笑しながら昼食を頬張っていた。
ふとハンジが何かを思い出したかのように、スプーンを持つ手を止めた。
「そういえばマヤ、リヴァイがさっきエルヴィンとミケ相手に揉めてたみたいだよ」
「兵長が… ですか? 一体何を?」
「さぁ…。三日前に提出期限だった書類を持っていっただけだから、すぐに部屋を出てきちゃったんだよね。でもそのごくわずかな入室時間でも感じられた険悪な空気。あれは絶対何かあるね」
「……そうですか…」
何が起こっているかわからないが、大切なリヴァイ兵長のこと。マヤは心配になってくる。
「そんな顔をしないでおくれ。モブリット、何か憶えてないかい?」
「そうですね…、確か調整がどうとか言っていたような…」
「あぁ! そうだったね!」
ハンジも思い出したようだ。
「調整日だ。マヤ、何か心当たりはあるかい?」
「いえ…、ないです」
「そうか。まぁリヴァイは年中あんなしかめ面だし、揉めていた訳ではないかもしれないしね。気にすることはないよ!」
「………」
ハンジはそう言うが、気になって仕方がない。
早速その日の午後の訓練の第二部の時間、ミケの執務室でマヤはいの一番に質問した。
「あの…、お昼にハンジさんから聞いたのですが、兵長と何か揉めました…?」
「あぁ…」
ミケは思いきり意味ありげな顔をした。
そしてマヤの質問には答えずに、こんなことを言う。
「今日はリヴァイは紅茶を飲みに来ないと思うぞ」
「え? なんでですか…?」
「さぁな…」
書類の山を前にして、ミケはニヤニヤしながら多くを語らない。
これ以上何を訊いても答えてくれそうにもないので、仕方なくマヤは書類仕事に取り掛かった。
休憩の時間になった。
やはりミケの予想したとおり、リヴァイは姿を現さなかった。
紅茶を淹れて執務室に芳醇な香りが充満しても、マヤの心は一向に晴れない。