第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「……出たい訳じゃないんだけど…」
なんだかペトラの様子がおかしい。もじもじしているようにマヤには見えた。
「グンタさんが出ろって。オルオと二人で」
「オルオと? 何をするの?」
「それが…」
ペトラがバツの悪そうな顔をして言いよどんでいる。
「夫婦漫才しろって…」
「あら、いいじゃない。面白そう!」
ペトラとオルオの軽快なやり取りが楽しめそうだとマヤは手を叩いて賛成してみたが、ペトラの表情は曇っている。
「……どうしたの?」
「だって、どうしたらいいかわからない」
「そんなの、いつもどおりにやれば…」
マヤはそこまで言いかけて、ふとペトラの様子に気づいた。
……顔が少し赤くなってる…。
「ペトラ…?」
「いつもどおりってグンタさんもマヤも言うけどさ、別にオルオと夫婦やってる訳じゃないし! あいつが馬鹿なことばっかり言うから、ちょっと言い合いになってるだけで。それを勝手に面白がって夫婦とか…」
怒った口調だったが夫婦夫婦と自分で口にするたびに、ますます赤くなっていく。
「ごめん、嫌だったなら謝るわ。面白いって言ったのは良くないよね。私は二人のこと好きだから、二人のやり取りも好きなの」
「オルオとのやり取り?」
「そうよ。言い合いをしてるときも、そうじゃないときも、どんなときでも二人だけが持ってる空気感が好き」
「………」
「恥ずかしがることは何もないわ。でもペトラが嫌なら、人前でわざわざやらなくていいと思う」
「……じゃあ、やらない」
「そうね、それがいいわ。私と一緒に全力で観る側にまわろう」
「そうする」
そう言って口を真一文字に結んでいるペトラの横顔を見ていると、訊かずにはいられなかった。
「オルオと夫婦漫才って言われるの、そんなに嫌…?」
「嫌っていうか…、恥ずかしい。マヤは恥ずかしがらなくていいって言うけど、恥ずかしいもんは恥ずかしいよ! 自分でも変だと思うんだ。気にすることはないし、夫婦漫才だって本当の夫婦だって言ってるんじゃないのもわかってるけど…」
ペトラの顔はもう、耳まで赤い。
「でも夫婦だなんて…。ああもう! なんで私がこんなこと気にしなくちゃいけないのよ!」
「何を気にするんだい?」
ペトラの言葉を拾って、近づいてきたのはハンジ。