第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「今の俺たちにできることは、殉職者の名簿を正確に作成して、いつでも誰でもラキアのことを思い出せるように記録すること。それが供養にもなる」
「そうですね…。いい名簿を作ります…!」
もうマヤは泣き出しそうではない。しっかりとペンを握り、書類に目を落として作業を再開した。
とりあえずは直近の壁外調査の犠牲者から名簿を作っている。そこから過去へさかのぼって、年数が書かれた書類箱に無造作に突っこまれているだけの兵士たちの履歴書をファイリングしていく。それは名前や入団年、出身訓練兵団などで分類して、どの情報からアクセスしても履歴書がどの書類箱に入っているかわかるように。そして存命の兵士からは、登録している実家以外にもし緊急連絡先があるのならば聞き取りをして、追記しておくこと。そうすることによって、このあいだザックの遺族と一時連絡が取れなくなった事態のようなケースを避けられる。
巨人を撲滅する志なかばで去ることになってしまった殉職者を、決して使い捨てではなく亡くなる前も亡くなってからも、ともに戦ったかけがえのない仲間として永久に胸の奥に刻むためにも。
リヴァイとマヤは強い信念を胸に、名簿作りに邁進した。
調査兵の月日の経つのは、その任務の内容がゆえに他の兵団の兵士たちよりも早く流れているのかもしれない。
一年の締めくくりの極月である12月も、気がつけば十日も過ぎていた。
食堂でのぼる話題はいつしか年末年始の過ごし方で占められるように。なかでも一番の関心事は “年忘れの宴会” の出し物についてだ。
「今年は俺たちが何かしろって先輩がうるさいんだ。何をすればいいんだ!」
「そうだな…。お前は結構歌が上手いから歌えばいいんじゃねぇか? オレがバックコーラスをしてやるよ」
「馬鹿! 出るだけじゃない、優勝しろって言われてる」
「……それは難しいんじゃ…。ミケさんに勝てる気がしねぇ…」
……といったやり取りが頻繁におこなわれるようになった。
当然マヤの周りでも。
「マヤ、“年忘れの宴会” 何かやる?」
ペトラが大きな目をくりくりさせながら訊いてきた。
「私は何も芸がないもの。今年も観客に徹して、うんと楽しむつもりよ。ペトラは出たいの?」