第29章 カモミールの庭で
イルザとマヤの心中などお構いなしといった軽い態度で、レイはどんどん話を進めた。
「だからよ、紅茶を飲んで懐かしいだの、スコーンを食べて美味しいだのそういう誰でもしそうな話はもうやめようぜ? それよりせっかく長い時をこえて、王都から飛び出してきて逢えたんだ。それなりの話をすべきじゃねぇのか」
「レイ、それは一体どういう意味なの…。まるで私とリックのあいだに何かあったような言い方をして」
イルザの顔は真っ赤だ。
「何かあったかどうかオレは知らねぇし、どうでもいいね。だが、いかにも何かあったらしい雰囲気の二人が妙によそよそしくして、懐かしかったわ、さようならでそれで本当にいいのかよ?」
「………」
泣きそうな顔をして何も言い返せないでいるイルザを見ていて、マヤは気の毒になってくる。
「レイさん。そんな言い方はひどいし決めつけることも良くないわ。お二人のことは私たちがどうこう言うべきものでもないし、イルザさんに何かを強要するなんていけないことだわ」
「ハッ、何を今さら。もう茶番は終わりだ。リックとイルザの関係がどうなのかはこの際どうでもいいんだよ。話があるならすればいいし、ねぇならねぇでそれでよし。だが今は話があるのかねぇのかすら、わからねぇ状態じゃねぇか」
「……それはそうだけど…」
「なら、とりあえず話をしねぇとな」
にやりと口の端を上げて、レイは卓上の呼び鈴を鳴らそうとする。
「ちょっと待って!」
マヤの声で手を止めた。
「……なんだよ」
「なんだよじゃないです! 何をする気?」
「リックを呼んでイルザと話をさせる。それしかねぇだろ」
「そんな強引な…!」
マヤはイルザの気持ちを最優先に事を進めたい。
「イルザさん、レイさんは無茶なことを言ってますけど…。どうですか? リックさんと話したいですか?」
「わからないわ…」
困ったような泣きそうな、なんとも言えない顔をしてイルザは押し黙ってしまった。