第29章 カモミールの庭で
イルザは派手な顔立ちの従妹を見つめ返した。
「アマンダには薔薇や百合のような、あでやかな花がよく似合うわ。でも私にはこのカモミールの花が、一番自分らしい気がして好きなの」
「確かにあたくしにはその花より薔薇の方がふさわしいし、イルザにはその花がぴったりだと思うわ。マヤさんは、どっちの花がお好き?」
「えっ、あ… はい」
急にアマンディーヌ・バルネフェルト公爵夫人に話を振られてマヤは戸惑ったが、すぐに嘘偽りのない言葉を返す。
「薔薇もカモミールも大好きです。どちらにもそれぞれの良さと美しさがあると思います。私は紅茶屋の娘ですのでお茶でたとえさせていただきますけど、ローズティーはその素晴らしく優雅な薔薇の香りが、特別な日を演出するのにぴったりです。また薔薇の花びらにはビタミンCが多く含まれていますから、ローズティーは美容にもいいんですよ。そしてカモミールティーは甘いりんごのような優しい香りで、気持ちを落ち着かせてリラックスしたいときに最適です。どちらもなくてはならない最高のハーブティーです。だからそれぞれの花も、そしてそれに似合うお二人も、最高だと思います」
「まぁ…! 紅茶で答えるなんて面白い方ね、マヤさんは。うちの子が夢中になるのもわかる気がするわ…、社交界にはいないタイプだもの」
褒められたのかどうかマヤにはよくわからなかったが、とりあえずは失礼のないように言い添えた。
「あの…、すみません。バルネフェルト公爵夫人やラント前侯爵夫人を紅茶でたとえるのは失礼だったかもしれません」
「いいえ! そんなことは全くないわ。素晴らしい意見で私は感動したわ。マヤさん、紅茶を愛する者同士ですもの、堅苦しいラント前侯爵夫人ではなくイルザと呼んでくださいな?」