第29章 カモミールの庭で
セバスチャンの案内に従って、その貴婦人たちの座っている二人掛け用のソファのちょうど向かいに位置する四人掛けの大きなソファに、調査兵団の三人は座った。エルヴィンを真ん中に左端にリヴァイ、右端がマヤだ。
……誰かしら? 私たち以外にもお客様がいるなんて思わなかった。
マヤはそう思って、伏し目がちに貴婦人の様子をうかがった。
大きな出窓に近い側に腰を掛けている貴婦人は薄いクリーム色の髪を縦巻きにしていて、ハッと驚くほど肌の色が白い。見るからに控えめで、まさに淑女といった雰囲気だ。
その隣の貴婦人はまぶしいくらいの明るい金髪で、ファッションのことなど疎いマヤにもわかるくらいに最先端で高級な仕立てのドレスを、なんの気負いもなく自然に着こなしている。
「……さて、エルヴィン団長。久しぶりにお会いできて嬉しいわ」
高級ドレスの方の貴婦人が持っていたティーカップをソーサーにカチャリと戻すと、顔を上げてまっすぐにエルヴィンを見つめた。
……あっ!
その瞳の色を見て、マヤは瞬時に悟った。
……レイさんと同じ翡翠色! 髪の色は違うけど、もしかしてレイさんの…?
貴婦人の言葉に、すぐにエルヴィンが返した。
「本日は急な訪問になりましたことをお詫びします、バルネフェルト公爵夫人」
……やっぱり! レイさんのお母様だわ!
読みが当たったとひとり胸をドキドキさせているマヤをよそに、エルヴィンの言葉はつづく。
「私の方こそ久方ぶりに公爵夫人のお美しいご尊顔を拝見しまして舞い上がっております」
……お美しいご尊顔…、団長がここまで丁寧に頭を下げているのを見るのは初めてかも…。
「あら嫌だ、顔を上げてくださいな… エルヴィン団長。相変わらずお上手ね。そちらの二人はお初だわ…」
「はい。こちらが…」
「待って! 当てるから」
バルネフェルト公爵夫人は楽しそうだ。
「リヴァイ兵士長は簡単だわ。噂どおりの風貌ですもの。そうでしょう?」
“噂どおりの風貌” というものが何なのかは知らないが、リヴァイはとりあえずは “そのとおりだ” という意味をこめて軽くうなずいた。
「問題はあなたね…」
レイと同じ翡翠色の瞳にじっと見つめられて、マヤは緊張して身動きできなくなる。