第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
自身の正直な想いを言葉にしたマヤの頬は上気して、紅く染まっていた。
「事前に相談せずにすまなかった」
「そうですよ。知っていたら、あんな言い方しなかったのに…」
マヤは調整日を申請したとリヴァイが言ったときの自身のつれない発言を思い出して、恥ずかしそうにしている。
「二日つづけての休みを取れるのが、年末しかねぇと思ってな」
一年の終わりと始まりが月の満ち欠けとともに押し寄せる年末年始が、さまざまな行事や仕事納めに追われて慌ただしく過ぎていくのは世の習い。特殊な任務をなりわいとしている調査兵団の兵士たちも、その例に漏れない。
毎年12月29日にいわゆる仕事納めとなる任務最終日を迎える。その日は実質訓練はなく、兵舎や訓練場の大掛かりな清掃をおこなう。さらに冬期特別休暇で帰省する者たちは、その準備に追われる。そしてその夕方より “年忘れの宴会” が開催されるのだ。
翌日の30日から多数の兵士に特別休暇が付与され、実家に帰る。正月を家族とともに過ごし、英気を養い、1月4日に兵舎に戻ってくるのだ。
ただし兵舎を空にする訳にもいかないので、兵舎に残る兵士もある程度の人数いる。ほとんどが交代でその任務を担うが、なかにはリヴァイのように、帰省先がないため兵舎で年越しをする者もいる。
「そうですね。兵長はお仕事が忙しいから二日連続で休むのも…。あっ、でも30日からあとの日付けだったら特別休暇で二日でも三日でも休めるのに…?」
それをわざわざ27日から二日間の休暇を取ろうとしたのは何故と、マヤは不思議そうにしている。
「それは…、マヤはクロルバに帰るだろ」
「……そうですけど。言ってくれたら予定を空けたのに」
「いや、ジョージとルチアとの時間を邪魔したくねぇ」
「……ありがとうございます…」
親子三人の絆を大切に考えてくれているリヴァイの優しさは嬉しい。
だがマヤは心の奥底からある想いが湧き上がった。
「兵長…、お気持ちは嬉しいです。だから今回は一人でクロルバに帰ります。でも次からは兵長も一緒に帰りませんか? それか私が兵長のご実家に帰ってもいいです」
「マヤ…」
優しく、強いマヤの想いが愛おしい。