第29章 カモミールの庭で
干し肉と豆の盛り合わせを酒の肴にバーボンを飲むリヴァイ。
「兵長、それだけですか?」
「………?」
何が言いたいのか、といった顔で視線だけを投げてくる。
「おなかが空きませんか? いつも私の方が食べる量が多くて心配になります」
「兵団では食べてるだろ…」
「それはそうですけど…。お店ではお酒ばっかりであんまり食べていない気がして」
「干し肉は旨味も栄養も凝縮しているから食う量が少なくてもいいし、豆はこんな小さな粒に生命の源が詰まっているんだからな。大丈夫だ」
リヴァイが器用に小さな豆をフォークに乗せたところへ、最後の一品が来た。
「ホロホロ鳥の卵を使ったココットでございます」
「あっ、来た来た!」
マヤは拍手でもしそうな勢いで目を輝かせている。
真っ白な丸い形の陶器のココット型に卵を割り入れ、薄切りにしたマッシュルームを散らして塩胡椒で味付けしたものにチーズをかけて薪オーブンで焼いた卵料理。
「……熱っ!」
できたてホヤホヤを食べようとすぐにスプーンですくって口に運んだマヤは火傷しそうになる。
「慌てて食おうとするからだ」
少々あきれたような声には、愛おしさにあふれていて。
「ホロホロ鳥の卵だから期待が大きくて早く食べたかったんです!」
少しすねたようなマヤの声。
「“くんたま” がなくて残念だったな」
「いいえ」
ふーふーと息を吹きかけてココットを食べたマヤはにっこりと笑った。
「すごく美味しいです、これ。今夜はこれを食べられて良かった。“くんたま” は次の機会に取っておきます」
「あぁ、そうだな」
リヴァイとマヤはやわらかい笑みを交わして、その後も食事を楽しんだ。
マヤはスプモーニを三回もお代わりした。
よっぽど気に入ったのかさらにもう一杯追加しようとして、リヴァイに止められる。
「兵長はずっとバーボンを何杯も飲んでるのにずるいです」
「ずるいとかそういう問題じゃねぇ。飲みすぎだろうが…。もうやめとけ」
「そんな! まだほろ酔いだから大丈夫なのに」
頬をぷうっとふくらませているマヤが可愛くて仕方がない。このまま好きなだけ飲ませてとことん酔わせてみたい気もするが、明日も任務はあるのだ。
……二日酔いにさせる訳にはいかねぇ。