第29章 カモミールの庭で
「乱雑に…というのは言いすぎかもしれないけど、ただ亡くなった年度の書類箱に入れてあるだけの状態だと思います。あれだとその人が亡くなった年度がわかっている場合は探し出せるけど、そうじゃない場合にどの箱に入っているかわかりません」
「そうだな」
「だから…、そこを項目ごとに分類して…」
マヤの言葉を流れるように引き継ぐリヴァイ。
「殉職者の履歴書の目録を作ればいい。名前や入団年、出身訓練兵団などで分類して、どの情報からアクセスしても履歴書がどの書類箱に入っているかわかるように…。そういうことだろ?」
「はい、そうです…!」
自身の言いたいことをリヴァイがまとめてくれて、マヤは嬉しくてたまらなくなる。
「兵長はどう思いますか…?」
「死んでいったやつらの書類がどうなっていたかは考えたこともなかったが…。とりあえずは生きていても死んでいても調査兵としてともに戦っている仲間なんだ。統一された名簿を作って、死んだあともどこに履歴書があるか目録を作る…、いいんじゃねぇか」
完全な同意を得て、マヤはさらに希望を伝えることに決めた。
「それでその…、兵長の執務のお手伝いをしているときに合間を見て作成したいのですが…」
ちらりと上目遣いで言ってみれば。
「わかった。エルヴィンには俺の方から言っておく」
「本当ですか? ありがとうございます…!」
マヤの声が弾む。
「あぁ、俺も手伝おう」
リヴァイも手を貸そうと機嫌がいい。
それもそのはず、リヴァイも嬉しかったのだ。
マヤがミケとの執務中ではなく、自分との執務中に作成したいと申し出たことに。
それに殉職者の書類が無造作に箱に突っこまれていたなど、想像するだけで虫唾が走る。
きちんと整理整頓して、見やすく効率のよい情報を掲載した調査兵の名簿を作成。亡くなった場合は名簿から外さなければならないが、殉職者の名簿をあらたに作成すればいい。
神経質で塵ひとつ見逃さないリヴァイにとっては、マヤの提案した名簿作りは、この上もなく真っ当でぜひ実行すべき案件だった。
そして、それだけではない。
……執務が忙しければ、時間を作って作成すればいい。これでまたひとつ、マヤと一緒に過ごす時間が増えた。
リヴァイは上機嫌で手元の酒を飲み干した。