第29章 カモミールの庭で
ハンジの説明にエルヴィンの眉が高く上がった。
「丸投げだなんて無責任な言い方をしてもらいたくないな。レイモンド卿のプロポーズはデリケートな問題だからね、下手に外野の私が説明して公爵に誤解されても困るだろう? それよりかはリヴァイとマヤの二人を、公爵の目で直接見てもらうのが手っ取り早いだけさ。なにしろ公爵は多額の寄付をしてくれる最重要人物なんだから」
「……外野じゃねぇだろうが…」
全く話を聞いていないようでその実、耳をすまして全身全霊で集中しているリヴァイが苦々しくつぶやいた。
「そうだね、感情の当事者はレイモンド卿、マヤ、リヴァイだけど、結局みんな寄付金のためにエルヴィンの思うように踊らされた感じがあるよね。エルヴィンが外野っていうのは違うんじゃないかなぁ?」
ハンジがリヴァイに同意する。
「ひどい誤解だな。マヤを好いたレイモンド卿の感情は本物で私が操作したものでもなんでもないし、求婚もしかりだ。その求婚に対するマヤの返事も、リヴァイの行動もすべて当事者三人の自由意志であり、私はなんのタッチもしていないのに」
「でもさぁ、可愛くて優秀な調査兵のマヤを失うことなく寄付金も手に入れてさ、なんか結局エルヴィンの思惑どおりになってるよねぇ?」
「あはは。不確定なはずの未来が、たまたま調査兵団に都合のいいように転がった。それだけだ」
とぼけた顔のエルヴィンの金髪の分け目を背後から眺めて、リヴァイは心の内で舌打ちをする。
……どいつもこいつも…、俺も含めてエルヴィンに踊らされてやがる。
「さぁ、もう無駄話はいいだろう。9月の兵団合同会議の日程でザックの遺族訪問をおこなう。ミケ、マヤへの伝達および訓練の調整を頼む」
「了解」
「では以上だが…、何か他にあるか?」
リヴァイとミケはあえて黙っている感じで、ラドクリフは心ここにあらずな様子。恐らくこれから9月、秋の種まきの花のことでも考えているのだろう。