第29章 カモミールの庭で
「変な兵長!」
マヤはまだ笑いが止まらない。
「ピィゥーピー!」
「ねぇ、おかしいよね?」
鳶とごく普通に会話をしているマヤ。
つくづく変な女だとは思いつつ。
……だがこういう鳥や馬にも人と変わらねぇ態度で接するところが、マヤの優しさであり本当の強さだ。
「……この木に巣を作っていたのね。とっても立派な巣ね!」
「ピー!」
巣を褒められて嬉しかったのか、鳶は巣の上でバサバサと両翼をばたつかせた。
「ふふ」
心から愛おしそうに鳶を見上げている。
いつまでも再会した鳶と話をさせてやりたいが、刻一刻と薄暮から宵のうちへと街はうつろいゆく。
「……そろそろ帰らねぇとな」
「そうですね。……鳶さん、また来るね。いつになるかはわからないけど、きっと」
「ピィゥーピー!」
鳶はまっすぐにマヤを見下ろして返事をしたあとに、明らかにリヴァイの方を向いた。
「……ピッ!」
「兵長にも来てほしいみたいですよ」
「……そうか?」
半信半疑で見上げれば、相も変わらず鋭い目つきの鳶が待っていた。
一羽の鳥の瞳は深みのある茶色で、想像していたよりも知性があふれ出ていた。リヴァイをじっと見つめるその目は、信頼に値するか値踏みするかのような厳しさと同時に、愛しているものを守る優しさが見え隠れしている。
……お前も俺と一緒なんだな。マヤのためを想っている。
鳶が自分と同類だとリヴァイが気づいた途端に。
「ピィッ!」
鳶の声が響いた。その音色は今までで一番やわらかい。
もうリヴァイも、敵対視されているとは思わなかった。
「あぁ、またな」
リヴァイはくるりと樫の木に背を向けた。
「帰るぞ」