第29章 カモミールの庭で
……俺の性急な口づけが、マヤを怯えさせ混乱させている。
だが、それだけじゃねぇ。
マヤは気づいちゃいねぇが、身体は欲望に素直になっているみてぇだ。
今はまだそのときではねぇが、そのうちマヤももっと甘い疼きに忠実になって俺と同じ愛欲に溺れるに違いない。
好きだからこそ、大切に想うからこそ…。
すべてを丸ごと愛して、感じて、抱いて、つながりたい。
いつか必ず…!
リヴァイは腕の中のマヤが落ち着きを取り戻したのを感じた。
「……私も兵長を感じていたいです…」
つぶやいたマヤの声は、きっと無意識で。
それは甘い吐息となってリヴァイの胸を直撃する。
二人はそれぞれに熱い想いを胸に大切にしまって、互いの体温と鼓動を感じながら、いつまでも抱き合っていた。
ガサガサガサ…!
「「………!」」
急に頭上から聞こえてきた物音に驚いた二人は、身体を離した。
「何…?」
「おい、あれ…」
リヴァイが素早く何かを見つけた。
「巣… じゃねぇか? 鳥の…」
指さした先には、高い枝の上に木切れで作られた鳥の巣が確かにあった。
「本当だ、巣ですね!」
マヤが発見の喜びの声を上げると、またガサガサと物音がして巣の主がぬっと下を覗きこんだ。
「あっ!」
「ピィッ!」
「……まさかと思うが、知り合いなのか?」
「はい! いつもこの丘で会っていた子です。巣があったなんて知らなかった…。空を飛んでいるところばかり見ていたから」
「いつも会って…?」
リヴァイが何か言いかけたが、鳶(とび)が遮る。
「ピィゥーピー!」
「ふふ、ごめん。久しぶりに会ったのにね」
マヤはリヴァイより鳶を優先した。
「ねぇ、元気だった?」
「ピィピー!」
「そう、良かった。ごめんね、休んでるの知らなかったの。あのね、この人はリヴァイ兵長。とっても強くて優しい人よ」
「………」
鳶は声を発せず、じっとリヴァイを見つめている。
その視線は、かなり鋭い。
「おい… あの鳥…、雄か?」
「さぁ、知らないです。あの子が雄か雌かなんて考えたこともなかったけど、どうしてですか?」
「いや…、敵対視されている気がしてな…」
「そんな、まさか!」
マヤはリヴァイの意見を笑い飛ばした。