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【黒子のバスケ】短編集

第16章 Dilemma【青峰大輝】


大輝はちゃんと戦力だった。
大輝が帰ってくるとあたしはホッとしてた。

それなのに、ありがとうを全然言わなかった。

他にも、ありがとうっていえば良かったことがたくさんあったのに、あたしはずっと言ってない。

「大輝に不満があった訳じゃないの。自分がどんどん意地悪になる気がして、少し離れて頭を冷やしたかった。大輝が帰ってきたくない家にしたくなくて、冷静になりたくて実家に来たの。紛らわしいことしてごめんね」

大輝と話してて、あの日が中学時代からの部活仲間でご飯を食べるって聞いてた日だったことをやっと思い出した。
既読がつかなかったのも、一日中会議だからって言われてたのをすっかり忘れていて、あたしが勝手に勘違いしてた。


「それに、触られるのが嫌とかじゃなくて……ずっとしてないことに罪悪感があるのに気持ちが向かなくて……ごめんねって思ってるけど…………そういう気に全然なれないの」

「罪悪感なんか持たなくていいしそんな気になれねぇって事は分かってたつもりだった。触ったせいでそうしなきゃいけねぇと思わせた俺が悪りぃけど、言い訳にしか聞こえねぇかもだけど、そういう事をするつもりで触ったんじゃねぇんだ……」


話せば分かってくれるし、話さなくても分かってくれてたのに……
あんなにひどい態度を取っても大輝は優しいまま。

「手繋ぐとかぎゅってするだけとかでも、大輝はいい?」

「いいに決まってるだろ」

「……ごめんね。触らないでって怒ってごめんね」

「触られたくねぇ時は嫌だって言っていい。我慢して俺に合わせなくていい」

「気持ちが戻らなかったらどうしようって考えちゃうの」

息子と公園を散歩してたとき、なんかの団体が配ってたパンフレット。
産後の夫婦生活は間があけばあくほどレスになる確率が高くて、早い夫婦だと医師から許可が出ればすぐに再開してるし、夫婦関係を良好に保つならそれが望ましいとも書かれてた。

気乗りしなくても旦那さんが望んだら応じるように心がけてとも。


「あれは相手をちゃんと好きで体力がなきゃ気は向かねぇんじゃねぇか?どっちかだけじゃダメなんだよ。しかも産後はホルモンバランスも乱れるだろ?落ち着くのには時間がかかって当たり前だろ」
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