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【黒子のバスケ】短編集

第16章 Dilemma【青峰大輝】


「お鍋何入れる?」

「んー。お魚がいい。見てきていい?」

「食べたいの持ってきて。野菜みてるから」

地元のスーパーはすごく久しぶり。
東京だと高すぎてたまにしか買わない果物も、こっちでは毎日食べられる価格で売られてる。

離乳食も始まっていて、いちごとみかんの果汁はあげてるからそれをカゴに入れると、抱っこ紐の中の息子が手足をパタパタさせてる。

息子はいちご大好き。

「後でジジババと食べようね」

笑った顔が大輝に似てる。

子供の笑った顔が嬉しいはずなのに、大輝の昨日のあの悲しそうな顔をまた思い出してギュッと胸が締め付けられる感じがした。

まだ結婚する前、大輝のスマホにキャバ嬢からメッセージがきたことがあった。
何通かのメッセージが届いた後、次はいつ会える?♡って内容がポップアップで見えて、あたしはめちゃくちゃ大輝を責めて、大っ嫌いって言って大輝を拒絶して、その時もすごく悲しそうな顔だった。

喧嘩すると言い合いになることはあっても、あんなに悲しそうにされた事はなくて、もう思ってもないことは絶対言わないようにしようって思ってたのに……

結局それだって、上司の指名したキャバ嬢と一緒に席に着いた別のキャバ嬢が、大輝たちが帰った後に大輝の連絡先を知りたいって言って指名の子を通して上司に聞いて、勝手に上司が教えたから連絡が来ただけだった。

今回だって大輝は何も悪くなかったのに……
またあんな風に悲しい顔をさせた。




「あれ?お魚まだ見てない?」


「あ、……うん。果物食べたくて」


お母さんの声で現実に戻ったけど、仲良くお買い物をしてる赤ちゃん連れの夫婦を見て涙が勝手に出てきた。

慌てて手の甲で涙を拭ったけれど、多分お母さんは気づいてる。


「お魚、ハタハタにしようよ。美味しそうだから。好きでしょ?」

「……うん。すき」

「〆おうどんにするでしょ?好きなの持ってきて」

「うん」


気づいててもあれこれ聞かれないのはありがたい。

息子の頭に顔を擦り付けて涙を隠しながら、冷凍コーナーで好きな銘柄のうどんを探した。


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