第12章 Bout
はっとして目を開ける。
世界はいつも通りの色をしていてまぶしかった。
「綿世、大丈夫か」
轟くんが私に手を差し伸べている。
私は眠っていたのだろうか。地に突っ伏した状態から立ち上がるべく、彼の手を取った。
「あ、ありがとう⋯⋯あの、私、寝てた?」
あたりを見渡すも演習場は変わらない姿を保っている。暴走したわけではなさそうだ。
「数秒固まって動かなかったが──寝てたのか?」
心配そうな顔が私を覗き込む。
「ううん。ごめん、ちょっとぼーっとしたみたい。夏バテかなぁ」
安心させようと笑ってみせたけれども、轟くんは誤魔化されてはくれなかった。ぬくい左手が頬に触れる。その手は熱でも測るように額に移った。
汗ばんだ肌に触れられるのが嫌で、でも払いのけることはできず、うつむくだけに留めた。
「顔色悪いな。熱はなさそうだが。さっきの、つらかったか。」
「⋯⋯うん、少し。でも平気だよ」
温かい。
額に触れる手の熱に心が落ち着いていくのがわかる。
それとは反対に轟くんの表情は曇っていく。なぜ、と考える暇も与えてくれず、いきなり体が宙に浮く。
「えっ、ええっ?なに、なんで?」
轟くんに抱きかかえられたかと思えば、いそいで演習場から運び出される。わけがわからない。近くにある端正な顔立ちに赤面しつつも、降ろしてほしいと頼んだ。こんなところだれかに見られたらいろいろとまずい⋯⋯!
「綿世、平気じゃねぇって顔してる。保健室まで我慢してくれ」
「平気だよ!本当になんともないから⋯⋯」
「こんな顔面蒼白でなに言ってんだ──ん、やっぱ熱出てきたのか」
「う⋯⋯熱ないから!あ、暑いだけ!」
至近距離で顔をまじまじと見つめられて耐えられるわけもなく。顔隠しついでに両肩に手を置いて、降りるポーズを取った。そうして渋々廊下に降ろされる。その表情はやっぱり心配そうだった。