第12章 Bout
更衣室に戻って帰り支度を済ませる。
暴走こそしなかったものの、轟くんには心配をかけてしまった。あれは白昼夢だったのだろうか。
おぼろげな夢の影になにひとつピンとこない。ただ、あの公園は家からそう遠くないところにある。ゲームセンターはあの商店街にあっただろうか。
でも、もしかしたらこれも記憶の断片かもしれない。
着替えを済ませ、廊下に出ると制服姿の轟くんが立っていた。夏服にも見慣れたはずなのに、どきっとしてしまうのはなぜだろう。
「おまたせしました」
ぎこちなかったかな、と思いつつもあくまで平静を装って轟くんの隣に駆け寄る。どちらからともなく昇降口に歩を進めた。
「綿世」
「うん?」
「いや⋯⋯もう大丈夫そうだな」
轟くんは私の顔を見ると、静かに安堵の息を吐いた。はじめからそう言っているのにずいぶん信用がないようだ。
「私からすれば、轟くんのほうが心配だよ。いろいろ抱えて大変なのに私のことまで考えて──押しつぶされちゃうんじゃないかって、思うよ」
「俺のは全部今に始まったことじゃねぇ。それに、少しずつだが前に進んでる⋯⋯と思う。うまく言えねぇが、今は前よりも視界が拓けてる感じだ。だから、もっと頼ってくれ」
真剣な眼差しから目をそらすことはできなかった。
轟くん変わったなぁ、と心の中の冷静な自分がしみじみとつぶやく。
「あのさ、轟くんは近所の商店街にあるゲーセン、わかる?」
「げーせん⋯⋯わかんねぇ──いや、今整骨院になってるところか。」
「あ、そっか、整骨院のところか⋯⋯。あの、さっきね、公園とその路地が思い浮かんだの」
轟くんの目がわずかに見開かれる。
「今度、行ってみようかなって。轟くん、いっしょに来てくれたら、助かる」
正直なところ、あの公園はどうにも嫌な感じがして近寄りがたい。ということは、あの路地も私にとっていい場所ではない気がする。
ひとりで見に行くのは不安だった。そんな自分が情けなくはあるけれど。轟くんが来てくれるのであれば、ふしぎと大丈夫って思えた。