第11章 Advance
──くしゅんっ!
自分のくしゃみの音ではっと目が覚める。無我夢中で自分を包んだ綿が鼻をくすぐっていた。
普段も寝ている間に勝手に出てしまった綿に起こされることがある。意図的にやってうまくいくかどうかは完全に賭けだったけれど。
私は起きられたものの瀬呂くんは動かされても爆睡だった。もしかすると女性には効きにくいのだろうか。
そうであれば私は峰田くんよりかは有利なはずだ。
声のする方に向かうと、峰田くんは岩場でミッドナイト先生と対峙していた。先生の体を覆う綿はまだ七割ほど残っている。でも隙間があってはたいした妨害にはならない。私は唇を噛んだ。
「うわあぁぁ!」
ゲートの手前。峰田くんは逃げ惑いながらも頑張ってる。泣きべそかいてるけどきっと諦めてない。だってまだ個性を使ってない。いつもパニックになったら、焦りのままばらまいちゃうのに。
温存してるってことはなにかあるのかもしれない。
なんにせよ先生をゲート前から引き離す。隙あらばカフスをかけるかゲート突破だ。私はふたりの元へ走った。
「峰田くん!」
「綿世ー!お前なら無事だと信じてたぜ!」
峰田くんを背に先生の前に立ちふさがる。先生は口角をあげたまま、鞭で地を叩いた。
「あら、随分お早いお目覚めね」
「お、おかげさまで変な夢をみた気がします⋯⋯!あと何分ですか」
「3分切ったってとこかしら。残りの時間でなにかできる?」
「まったくの無策です⋯⋯」
「うおおおい!うそだろ!?当然のようにオイラの前に飛び出しておいて!?」
ミッドナイト先生はくすりと笑う。
「それならもう一度寝かしつけてあげる。今度は夢も見ないくらいぐっすりと、ね」
「お、お断りします⋯⋯!峰田くんこっち!」
「綿世!」
一気に間合いを詰める先生に対し、私は峰田くんの手を引いてゲートとは逆に走る。あわてて岩場の陰に隠れたがすぐ近くで先生の「あと2分」という声が聞こえる。もう先生の香りの届く範囲だ。ふたりして両手で鼻と口を押さえ、もごもごと喋る。
「綿世なんかないのかよ!」
「峰田くんこそ、なにかないの!」
「ねえよぉぉ!」
「ふふ。そんなところで息止めてまだ頑張っちゃうつもりかしら!」
そのとき、峰田くんの口元に笑みが浮かんだ。見てろよ、と言いたげな必死で真剣なまなざし。私は小さく頷いた。
