第103章 伝説(でんせつ)
長老「泣きたい時には泣いたらいい
じゃがな、前を向いて生きろ
ずっと嘆いて、何も出来んなんて真似をしてみろ
その分、お前は腐り、刃は鈍り、更に死へ近付く
誰にも死んで欲しくないのなら…生きろ!!」
恵土「じいちゃあああああん!!」
長老「べそべそ泣いとるんじゃないわ!女々しい!!
泣き虫は嫌いじゃぞ!!」
恵土「びくうっ!!)」ぎゅっ!!必死に泣き止む
長老「………
ふっ
大丈夫だ…恵土(ぽんっ)←肩の上に手を置く
目の前だけが、全てではない
死ぬことだけが、命では無い
生きて、己が道を切り拓け
さすれば光もいずれ見えてこよう
やりたいことも、なしたいことも、己で見つけ、己が手で叶えてゆくものだ
それが一番…生きていく上で欠かせない、大事なことなのじゃからな
わかったな?」
恵土「じわっ!)はい!!!」力強く頷く
長老「うむ…
どれ、一局でも打つか」
恵土「ぐすん、昨日も打ったよ?」
長老「腕が立つのがお前しかいないんじゃ!
他は負けると決めつけて、掛かってきもしない!
とんだ逃げ腰の愚か者じゃ!
その点お前は逃げん、敵わなくとも手を組み合わせ削ろうと藻掻き足掻く、戦術にまで昇華させる
打っていて心地よいわ」微笑
恵土「そっか…
ありがとう^^//」心底嬉しい
長老「ほれ
盤を置け」
恵土「うん!
じいちゃんは左足悪いんだからこっちが持つよ
長老「ガキがいっちょ前に気を使うな!これぐらい持てるわ!!」
恵土「そ、そっか;ごめん!
ありがとう」ぺこり
長老「………
私は…第一次世界大戦後
壊死して脹ら脛(ふくらはぎ)から下の左足を無くして
恋人に迷惑を掛けまいと、距離を置いた
所帯を持つ資格もないと決めつけて…
左足は剣士に取っては、命の次に大事なものじゃ
全ての技の起点、支えとなるものじゃからな…
私はそこで腐った
妻にする勇気もなく、守る為に第二次世界大戦中にやっと所帯を持ち…そして……
子を身ごもったと思って喜んでおったらこのザマよ…
今でも思う…
もう少し決断が早ければ…
もう少し、考えていれば…
無能な上に殺されることもなく、竹馬の友が殺されることもなく、左足を失うこともなく、恋人も子も喪うことは無かったのではないかと……」
恵土「………じいちゃん」
昔を懐かしむように遠くを見て呟く長老に
恵土は悲しげな顔をして見つめていた
