第102章 戦乱(せんらん)
互いに正装
神の御前試合により
剣を持たない半上下の長老と
着物に袴を履いた恵土が
盤面越しに向かい合っていた
0時を過ぎてもなおそれは続き…
引き分けという試合結果の宣告、周囲の制止を受けても言葉(観える次の手)を止めず
最低でも15000を超える盤面を見つめていたように見えた
止まらず正座したまま微動だにせず続ける恵土のそれに…
普段掟に厳しい長老が感嘆の息を零し、立ち上がり掛けた足を止めて、立てた右足を戻して正座し直す
長老「神よ…
初めて決まりを破ります
どうかお許しを…」すっ
襟を手で持って正座し、姿勢を正す
両手を膝に乗せ、背筋を伸ばし、恵土の目を真っ直ぐに見つめる
長老「お相手します
よろしくお願いします」お辞儀
恵土「よろしくお願いします」お辞儀
詰みまで…まだ50手以上ある
気付けば…
2:47
パチン
恵土が指したそれを受けて
長老「参りました」深々お辞儀
両手を膝に付き、深く頭を下げた
互いに駒落ち無しの平手差し、真剣勝負…
その後…
長老「おい、恵土?」そっ←左肩に右手を置く
恵土「……」ぐらっ
がたあんっ!!
将棋の取った駒を置く駒台(左側)に倒れ込み
そのまま意識を失った
将棋盤と盤面のみ崩さず、最後までやり切った
のだが…
19:00から2:47までずっと正座したまま、姿勢を崩さぬまま打ち抜いた結果だった
7時間47分ぶっ続けで…小休止も無しに
時間制限も長考の制限も無し
花火が上がった後でのことで…
長老の推薦で打たされた席でのことだった
相手できるのはもうお前しかいない!
と周りからも背を押されてのことだった
当時の棋譜は…棋王・王将クラスのそれを発揮していた
序盤こそ完全に押されていたものの、12手目を超えた辺りから…流れが大きく変わった
計算に頼らぬ為に、敢えて右目を閉じ、右手を使わぬようにし
左目のみを開け、意識を集中し、左手で指し出した
恵土(私は頭で小難しく考えるのが苦手なタイプ
つまり左脳向き(右手、右目)ではない)
そう判断し、挽回する為の、苦肉の策だった
次の瞬間から…目に見えて、駒全体の動きが変わった
互いに連携し合い、活かし合う形を自然と取り出し、取り辛くさせつつ、まるで生き物のように、動きも流れも揃えながら、敵のそれごと飲み込む勢いで、襲い掛かってきた
