第51章 身勝手な優しさ
「……さて。勝負ありましたよね、サソリさん?」
「……何の話だ。」
サソリがルナの方を不機嫌そうに見て、傀儡の目を細める。
「え?だってさっきの攻撃、もう避ける気なかったじゃないですか。
私が突き飛ばさなかったら、殺られてましたよ、多分。」
「…………」
思い当たる節があるのかないのか、サソリが押し黙った。
傀儡となったその身体からは、完全に殺気が消え、何か別の…………漠然とした寂しさのようなものを滲ませていた。
(ルナお姉様……アイツを、説得しようっての?)
(サソリ…………)
それに気がついて、サクラとチヨバアは、そのやりとりを茫然と見ていた。
「……ねぇ、サソリさん。もう、やめにしませんか……?
わかったでしょう?あなたにだって、心がある。肉親を思う心が。
だから、躱せなかったんでしょう?だったら、チヨバアさんだって、殺したらきっと後悔します。
私皆さんに、これ以上傷つけ合って欲しくないんです。
私は愛する人を、もう戦いで亡くしたくないんです!
そんなの忍失格だし、私のエゴだって、わかってます。でも…………私、サソリさんが好きなんです!生きていてほしいんです!
だから…………もうやめて。私と一緒に、来て下さい。」
ルナが悲痛に叫び、サソリに嘆願する。
サソリはいつもの無表情のままで、差し出されたルナの小さな手を見つめていた。
「…………お前と一緒に行って、それでどうなる。」
しばらくして、サソリが訊いた。
「…………あなたの求める、永遠が存在するところへ案内します……私の故郷、私の仲間たちがいるところです。
彼らがきっと、あなたを闇から救い出してくれる。
だから……お願いします…………!」
ルナが潤んだ青い目で、サソリの顔を見つめる。
その眼差しは酷く必死で、捨てられそうになった犬が飼い主に慈悲を乞うているかのようだった。