第66章 千年血戦篇弍
滅却師相手だから意識して虚の力を多く出してはいるが、判断は正しかったらしい。そして虚化した今、彼から余裕がなくなっている。
「初めからこうしとけばよかった」
虚化して戦えばよかった。そう思った束の間、男はふっ、と口元を緩めた。
「こっちも、初めからこうしておくべきだった【毒入りプール】」
あちらが初めて固有技を使った、なるべく離れて様子を見よう。
「その判断は正しい。嬢ちゃんの霊圧の耐性は付けきれなかったが、こうしちまえば関係ないからな。」
アスキンが背中を向けた。
「さっき私に言ったことを忘れたの?」
「俺が背を向けているのは敵じゃねぇ。敵だったものだ。」
そのとき、私の体に異変が起きた。
目眩で視界が眩む、強烈な吐き気、冷や汗……
「毒……?それだったら、」
花月を呼んで解毒できないか試してみようとした。
「やめた方がいいぜ、それはあんたにとって毒だ。」
霊力を上げようとすると、手脚が痺れ始めた。酷い目眩で立ちくらみ、敵を前にして手をついてしまった。
「毒といえばそうなんだが、ニュアンス的には『体に合わない』の方の毒だ。多分それじゃぁなんの意味もないぜ?」
わざわざ親切に教えてくれる。毒物を入れられた方が対処が出来たかもしれない。
息が苦しくなってきた。花月が毒の成分を判断して、対応してくれようとしているのだが、恐らくは『毒』成分が見当たらないのかもしれない。
アスキンは私に傷つけられた部分をさっと払いながら去っていく。
「あんたの霊力をまともにくらったんじゃ、耐性をつける前に俺が殺られそうだな。毒入りプールとしては未完成だ。アンタも数時間後には自力で起き上がれるまでに回復するだろう。それまでにジゼルに見つからないように瓦礫の中にでも隠れてな。あいつの戦い方は嫌いじゃねぇが、趣味が悪い。」
次第に呼吸が苦しくなってきた。気力で意識は保てているが、身体が言うことを効かない。