第37章 遊郭へ
「お前、違うなぁ。今まで殺した柱達と違う」
類を見ない髪色や体躯もそうだが、そんなものは捜そうと思えば見つかる。
それよりも妓夫太郎が目を止めたのは、天元の内部だった。
「お前は生まれた時から特別な奴だったんだろうなぁ。選ばれた才能だなぁ」
「…才能?」
「妬ましいなぁ。一刻も早く死んでもらいてぇなぁ」
妓夫太郎の言葉に、ぴたりと天元の動きが止まる。
その次に見せたのは、ハッと呆れ笑う顔だった。
「俺に才能なんてもんがあるように見えるか? 俺程度でそう見えるならテメェの人生幸せだな」
謙遜でも、はたまた煽りでもない。
心の底から湧き上がる感情を吐き捨てるように告げる天元の目は怒りに満ちていた。
「何百年生きてようが、こんな所に閉じこもってりゃあ世間知らずのままでも仕方ねぇのか」
「…ぁあ?」
「この国はな、広いんだぜ。すげぇ奴らがウヨウヨしてる」
常人を遥かに超えたこの体躯も。
「得体の知れねぇ奴もいる」
天元が見上げる程に遥かに立派な体躯を持った、岩柱の男がいる。
「刀を握って二月で柱になるような奴もいる」
かと思えば自分より遥かに小柄で若い身体をしながら、遥かに短い歳月でお館様の前で肩を並べる程の昇格をした霞柱の青年もいる。
「俺が選ばれてる? ふざけんじゃねぇ。俺の手の平から今までどれだけの命が溢れたと思ってんだ」
そしてたった一人で、己の命さえも引き換えに、何百人もの列車の乗客全てを守った炎柱の男もいるのだ。
どう足掻いても自分は彼らのようにはなれない。
「…だったらどう説明する?」
静かな天元の怒りに、ぐぬぅと喉奥で不満を漏らした妓夫太郎は納得のいかない顔をした。
いくら天元が自分を否定しても、説明のつかない理由がある。
「お前がまだ死んでいない理由はなんだ? オレの血鎌は猛毒があるのに、いつまで経ってもお前は死なねぇじゃねぇかオイ…ッ」
妓夫太郎の血と肉でできたような禍々しい鎌──血鎌。
そう名付けた妓夫太郎の特性は、猛毒持ち。
一太刀でもその刃を受ければ、たちまちに毒が全身に回り死に至らしめる。