第37章 遊郭へ
懐から取り出した丸い火薬玉を床に放る。
瞬間、カッと強い光を放ち足元で爆発が起こった。
その速さは、まるで天元が床に向けて手を振るうと同時に爆発が起こったようにも見えた。
「キャアァあっ!?」
「大丈夫ですか」
「ぇ…は?」
爆撃は的確に天元がいた足場に穴を開け、蛍や男女諸共一階へと落ちる。
悲鳴を上げる女の腰を片手で抱き、目を白黒させる男を片手で脇に抱え、蛍はふわりと一階の土間に着地した。
「逃げろ! 身を隠せ!!」
「さぁ行って」
「は、はいっ」
天元の鋭い指示に、二人を解放した蛍の手がやんわりと背を押す。
押されるままに女の手を取った男が、開いたままの外に通じる出口へともたつきながら駆けていく。
「逃さねぇからなぁあ。曲がれ〝飛び血鎌〟」
それを二階から見下ろす妓夫太郎は見逃さなかった。
骨と皮だけの指を、指示するようにクイと動かす。
すると標的を見失った落ちるだけの血の斬撃が、意思を持つようにぐんと空中で曲がり二人を襲ったのだ。
「ッ!」
咄嗟に蛍の足場から伸びた影が、男女の影を捉える。と同時に二人の足はびくとも動かなくなり、バランスを崩した体はその場に崩れ落ちた。
間一髪で男の頭があった場所を通過する血の斬撃。
それでも再びぐんと角度を変えると、転んだ男を尚狙おうとする。
バチャッ!
ぶおんと下から振るわれた天元の斬魄刀が、血の斬撃を真っ向から受けた。
強い衝撃に飛び散る様は、ただの血飛沫のようだ。
後から後から続けて襲い来る斬撃を、血飛沫を上げさせて天元が全て斬り伏せる。
そこでようやく攻撃を止める飛び血鎌に、天元は無言で目を見張った。
斬撃と取れる衝撃を与えない限り、相手の鬼血術は標的を狙い続ける。自動追跡機能の付いた斬撃のようだ。
妓夫太郎の血鬼術を理解すると同時に、突然現れた二人の悪鬼に天元は思考を巡らせた。
物言いから恐らく兄妹である上弦の陸。
そして妹の方は頸を斬っても死ななかった。本来ならあり得ない出来事だ。
兄の頸を斬れば消滅するのか。兄の体が本体なのか?