第37章 遊郭へ
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ギャンッと唸る鋭い刃をなんなく避け、鎌の柄を掴み取る。
ブーメランの如く戻ってきた得物を再び両手にした妓夫太郎は、妬ましく今も尚健全な天元をその目に映した。
「妬ましいなぁ、お前は本当に良い男じゃねぇかよぉ。なぁあ」
「…無事か」
「ぅ、うん」
「違ぇよお前じゃない、一般人の方だ」
同じく両刀の日輪刀を構える天元の後ろには蛍。更にその後ろには建物に残されたままの男女が二人。
その体の回りには蛍が咄嗟に広げた影鬼が球体の如く壁を作り上げていた。
それでも二人が無事なのは、蛍だけの成果ではない。
天元が妓夫太郎の鎌の攻撃を日輪刀でいなし、逸らしたお陰だ。
「人間庇ってなぁ、格好つけてなぁ、いいなぁ。そいつらにとってお前は命の恩人だよなぁ。さぞや好かれて感謝されることだろうなぁあ」
ぼりぼりと己の肌を掻きながら妬み続ける妓夫太郎の物言いを、冷えた天元の視線が受ける。
前を見据えたまま声は蛍と交わしていたが、初めて妓夫太郎へと向けられた。
「まぁな。俺は派手で華やかな色男だし。当然だろ」
「女房も三人いるからな」
「てっ天元?(事実だけれども!)」
突拍子もない天元の嫁三人宣言に蛍が目を剥く。
がしかしそれは蛍だけではなかった。
「お前女房が三人もいるのかよ…っふざけるなよなぁ!」
「え。」
「許せねぇなぁあ!!」
ぎりぎりと己の肌を傷付けていた妓夫太郎の爪に力が入る。
顔から血を滲ませながら顕著に妬みを、怒りを露わにする妓夫太郎に、蛍は開いた口が塞がらなかった。
妹思いの妓夫太郎が、まさか色恋に興味を示すとは。
「〝血鬼術──飛び血鎌(とびちがま)〟」
それは次なる攻撃の起爆剤でもあった。
再び両手を構えた妓夫太郎が血鬼術を繰り出す。
飛び血鎌。
その名の通り、鎌から離れた薄い刃のような血の斬撃だ。
血飛沫を上げながら幾重も繰り出される斬撃に、一般人を庇いながら捌くことは不可能だと見きった天元はすぐさま次の行動に移った。