第29章 あたら夜《弐》
──ぬちりと粘膜が引き音を立てる。
「っふ、ンン…ッ」
その度に上がりそうになる声を抑えて、蛍は強く着物の裾を握り締めた。
「そう声を抑えなくとも、此処ならば眼下に届きはしない。大丈夫だ」
「っそ、ゆ…問題じゃ…ぁッ」
「そうか? ならば問題は他にあるのだろうか」
「早急…するって、言ったのに…っひぅっ待っ」
「その為の"慣らし"だ。急に俺のものを挿れては蛍が痛いだろう」
てっきりその言葉通り、すぐに挿入されると思っていた。
しかしきちんと濡らさなければ挿れられないと告げた杏寿郎の手により、今は晒け出された秘部を掻き乱されている。
中指を一つ、出し入れされる度にぬちぬちと粘着質な音が微かに耳に届く。
杏寿郎の膝に横向きに座らされ、濡らしてはならないと着物の裾を捲り託し上げている。
この手で裾を握る様は、自ら下半身を晒しているような姿に思えて羞恥が高まる。
何より予想していなかった快楽を与えられて上手く頭は機能しなかった。
急いでいるのは本心なのか。待ってと声をかけても秘部を暴こうとする指は止まる気配がない。
「一本ではまだきついな。二本目もいけるか?」
「杏寿郎の、で…っン、あッ」
「俺のでは二本でもきついぞ。俺の形を覚えはしていても、君の中は解さなければ狭いからな」
ぬく、と更に太い指が蜜壺の中へと押し入ってくる。
思わず足の爪先に力が入り、かくんと腰が上がってしまう。
まるで自ら受け入れるかのような腰の動きに、杏寿郎の口角が弧を描いた。
「善いところを擦り付けてくるな…ここだろう?」
「ぁっあ…そこ…っ」
杏寿郎の指一つで簡単に高みに昇り詰める体になってしまった。
浅く上の膣壁を引っ掻くように刺激を与えれれば自然と高い声が上がる。
「もぅ…ッ」
深い絶頂ではないが、体が一瞬高みに昇る。
しかし絶頂への足掛かりとなる前に、流れるように責め立てていた杏寿郎の指が止まった。
「っぁ…?」
「いい具合に濡れてきたか」
「なん…で…」
「うん? あまり責めると折角の化粧が汗で落ちてしまうだろう」
物足りない顔をする蛍に、優しくも微かに色めく双眸を杏寿郎は細めた。
「それに気をやるなら、共にが良い」