第20章 きみにより 思ひならひぬ 世の中の
すらすらと告げる杏寿郎の分析も一理ある。
それでもどうにも信じ難いのは、蛍の知っている政宗は凡そそんな気配り上手な性格に結びつかないからだ。
眉間に皺を寄せて疑わしげに杏寿郎を見れば、よもやと笑われた。
「というか、いつからそんなに政宗と意思疎通できるようになったの…私は全然できてないのに。羨ましい」
「そんなことはないぞ。俺に対して彼は常に無口だしな。蛍の時のように喋ってくれない」
「あれほぼ暴言だから。口を開けば悪態ばっかり」
「それが性格なのだろう。彼なりの意志疎通だ」
「ええ…」
「そうだな。不死川のようなものだと思えばいい」
「あ。わかる。そう思えば多少は…いや怖いです逆に。不死川に出歯亀なんてされたら恥ずか死ぬ」
「はははっ俺もそれはごめん被りたい。不死川にこんな艶やかな蛍は見せたくないからな」
普段の空気を取り戻す蛍に、朗らかに笑いながら杏寿郎の手が優しく髪先を弄ぶ。
髪を梳いていく大きな手に心地良さを感じながらも、蛍は恥ずかしげに肩を竦めた。
「そう、かな…土塗れだけど」
「それなら俺も同じだ」
「…衣、汚しちゃったね…ごめん」
「洗えば済む問題だ。なんてことはない」
「それより、」と告げる杏寿郎の表情には清々しさがある。
「土や草の匂いも、虫の歌声も、心地良い夜だ。こんな所で蛍と愛の契りを交わせるとは…蛍といると、初めて感じることばかりで面白い」
「……スミマセン」
「ああほら、責めてないからそんなに恐縮するな。それだけ蛍と見る新しい世界は斬新だと言っただけだ」
「…ほんとに?」
「ああ」
「嫌じゃ、なかった?」
「無論。寧ろ途中から止められなくなったのは俺の方だ。蛍こそ、俺より慣れているだろうが無理をさせて」
「何言ってるの慣れてないよ」
「む?」
自分よりも遥かに交合の経験値は蛍の方が高いと思っている。
だからこそ語尾を上げて頸を捻る杏寿郎に、蛍は再度恥ずかしげに肩を竦めた。