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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第20章 きみにより 思ひならひぬ 世の中の



 血を迸らせる程に噛み付かれたというのに、何故か甘く感じた。
 痛みよりも蛍を深く貫いた自身を締め付けてくる、蜜壺が気持ちよくて。
 翻弄され欲に溺れる蛍の姿に、興奮を抑え切れない。


「く、う…ッ!」


 最奥へと押し当てたまま、杏寿郎も堪えていた欲を放っていた。
 衰える気配のない三度目の射精に腰が震える。


「ふ、んく…ッ」


 一度、二度と腰を押し付ければ、蛍の体もその度に跳ねる。
 一挙一動に感じる様がただただ愛おしくて、壁と己の腕との間に閉じ込めた。

 汗と愛液と唾液と涙で濡れ、深く抱き合う体はこのままひとつに溶け合ってしまいそうだ。
 どくどくと子種を吐き出す自身の脈動さえも、聞こえてきそうな程。
 今度こそ零れ落とさないようにと、一滴残らず蜜の最奥へと注ぎ込む。

 くたりと先に力を抜いたのは蛍だった。
 噛み付いていた口の力を緩め、背中にしがみ付いていた手も滑り落ちる。
 時折ひくりと思い出したように体を震わせるものの、大きな反応はない。


「は、あ…っ」


 全ての欲を注ぎきった杏寿郎もまた、次いで大きな息をついた。
 後孔から指を抜くと、力なく崩れ落ちそうになる蛍の体をしかと抱き直す。

 それでも立て続けに三度の射精を行い、無理な体制で責め続けた杏寿郎も一度腰を落ち着けたかった。
 くるりと体を反転すると、今度は自身の背を壁に預けたままゆっくりと重力に従い腰を落とす。

 胡坐を掻いた状態で、柔らかな芝の生えた地面に座り込むと、ほーっと長い吐息をついた。


「……ほたる…」


 腕に抱いた存在に改めて目を向ける。
 杏寿郎の肩に頬を押し当てたまま、ふぅふぅと短い息を零す蛍の顔は真っ赤だ。


(…愛い)


 痺れるような甘ったるい余韻を残す頭では、簡素な感情しか出て来ない。
 それでも感情に素直に従うままに、乱れ汗で肌に張り付けた髪を指先で流し、火照る顔に口付けた。

 触れるだけの優しい接吻。
 短い呼吸を繋げる口を塞ぐのは躊躇われて、唇の隅へと優しく触れた。


「……ん…」


 力なく凭れたまま、蛍の涙で濡れた瞳が杏寿郎を映す。
 千寿郎が綺麗だと告げた、月食のような紅い瞳で。

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