第20章 きみにより 思ひならひぬ 世の中の
ずく、ずく、と蜜壺の奥を擦り上げられる度に、揺れる足先がぎゅっと丸くなる。
「は、あっんぅッ」
ちかりちかりと瞼の裏で弾ける光は、蛍の頭を蕩けさせる。
どうにか嬌声を抑え込もうとするも、体は反して強く戦慄いた。
「蛍…っよもや、」
杏寿郎には見覚えがあった。
肌を赤らめ、涙を称え、強く蜜壺の中を締め付けてくるそれは。
(気を、やっているのか)
突かれる度に、溜め込んだ熱を放出させるかのように。高みへと昇り詰め、蛍は達していた。
みしりと杏寿郎の額に血管が浮く。
一滴残らず搾り取らんとする蜜壺の戦慄きに、欲を放ってしまわないように。
まだだ。
まだ目に焼き付けていたい。
五感全てを使って感じていたい。
月の光に照らされて、真珠のような涙と汗を肌に滑らせ喘ぐ、愛しきひとを。
「蛍…ほたる…っ」
「あぅ…ッひ、ぁッおかし、なっちゃ…ッ」
「なればいい…ッ」
「ぁあッ!?」
蛍の背を、背後の壁に押し付ける。
腰の律動は止めずに後孔へと二本の指を差し込めば、蛍の顔が仰け反った。
前から深々と貫いてくる熱い陰茎に、後ろから掻き乱してくる長い指。
質量は違えど、膣壁を挟んで擦り合う二つの責めに、最早思考など回らない。
子宮口を塞ぐように押し潰してくる気持ちよさと、今し方知ったばかりの強い疼きを覚えさせる後孔への刺激。
「は、あ、ッあ──…ッ!」
津波のように巻き込み引き摺り込んでくる快楽の渦に、蛍のなけなしの理性など蕩けきった。
「蛍…ッつぅ!」
鋭く伸びる牙に、縦に割れる瞳孔。
杏寿郎の背に爪を立ててしがみ付くと、蛍はすぐ目の前にあった筋の浮く筋肉へと噛み付いた。
甘噛みなどとは程遠いそれに、蛍の唇の隙間から血が滴る。
杏寿郎の頸と鎖骨の間に噛み付いたまま、しかし蛍はその血を飲み込まなかった。
「ふッ…──! ッ!」
びくびくと肌を粟立たせ跳ねる様は、尚も高みへと昇り詰めているのだ。
滴る血にも目を暮れない程、杏寿郎の熱に翻弄されて。