第45章 前方互換アノード
「入れっ!」
ヨンスの叫びに従い、前方に開いているドアに飛び込む。
一見するとただの一軒家だが、第一のセーフハウスだ。
ドアを閉める間際、エドが黒い靄を蹴散らして中に飛び込んでくる。
バタン! とドアがひとりでに閉まる。
「全員、無事なんだぜ?」
「な、なん、とか!」
ぜえぜえという喘ぎ声は、ヨンスと私のものだ。
「撃破数を数える余裕があるくらいには無事です」
エドはというと、息ひとつ切らしていない。
疲労はプログラムされていないらしい。
『カウントダウン、始めます!』
安堵する暇もなく、トーリスの声とともに頭上で「10:00」の数字が灯る。
1秒ずつ減っていくそれに、私は慌てて抱えていたパソコンをヨンスに渡した。
ここで目覚めたときから使っていたというパソコンは、手になじんだ筐体らしく、ヨンスのタイピングを高らかに響かせる。
「くそっ……これも失敗か……っ」
中央コンピューターに辿り着くまでに、事前に作っていたパスワード解析プログラムをひとつずつ試しているらしい。
髪をかきあげて顔を歪ませ、ヨンスは懐から別のチップを取り出した。
それをパソコンに挿入すると、猛然とタイピングを始める。
「公子さん、この部屋に見覚えはありますか?」
エドに言われて辺りを見渡すが、見覚えはない。
首を横に振って答えると、エドは「そうですか……」とちょっと落胆した様子だ。
それよりも、気になることがふたつもある。
ひとつ。誰かに見られている気がする。私たち3人以外に、誰かの気配がするのだ。
もうひとつは――あの電波塔にもっと近づけば、きっと確かめられる。